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クアルコムの次世代SoC「Snapdragon 810」、20nmプロセスへの移行が勝負に?プロセッサ/マイコン

Qualcomm(クアルコム)のモバイル機器向けSoCとして最新品種となる「Snapdragon 810」。多くの新しい機能を搭載し、プロセスも20nmを採用する。

» 2014年12月16日 18時30分 公開

 Qualcommは2014年4月に、モバイル機器向けSoC分野の最上位品として位置付けるフラッグシッププロセッサ「Snapdragon 810」を正式に発表した。それから8カ月がたった現在、Snapdragon 810の中身をもう一度詳しくみてみよう。

 Snapdragon 810が正式に発表される以前には、動作時に熱くなり、高性能メモリコントローラが機能しなくなるといううわさが飛び交っていた。そこで筆者は先日、Snapdragon 810を搭載したタブレット端末2機種とスマートフォン4機種を手にしてみたが、どれも高温にはならず、冷たいままだった。いずれの機種も、4K(3840×2160画素)テレビで4K映像やAAAゲームを利用でき、最小でも5インチのHDディスプレイを搭載している。これまでリリースを待ち望まれてきた、申し分のないブランド製品だ。

photo 前世代品「Snapdragon 805」を搭載した4Kタブレット。2014年6月の「COMPUTEX TAIPEI 2014」にて展示されたもの(クリックで拡大)

 Qualcommは2015年半ばに、Snapdragon 810搭載製品の販売を開始するとみられている。「2015 International CES」(2015年1月6日〜9日)において、こうした製品を実際に見ることができるかもしれない。あるいは、2015年第2四半期までに市場投入が実現する可能性もある。

 Snapdragon 810の主な特長は以下の通りだ。

  • Qualcomm初となる20nmプロセスSoC(TSMCで製造)
  • Qualcomm初となる64ビット「ARMv8」アーキテクチャを採用。「Cortex-A57」「Cortex-A53」を4コアずつ搭載
  • GPU「Adreno 430」を初搭載
  • IEEE 802.11acと、LTE-AdvancedのCategory 9に対応
  • 14ビットのISP(Image Signal Processor)カメラをQualcommとして初めてサポート
  • デュアルチャンネルの1600MHz LLPDDR4メモリを搭載
  • 4K画像向けのビデオ圧縮技術「H.265/HEVC」を搭載
  • UFS 2.0をサポート
  • アナログCODEC「WCD9330」を搭載

「20nmはコスト効果が高い」

 Qualcommは、このように多くの新機能を搭載するという賭けに出た。これは、潜在的な問題を生みだす可能性があるため、大手メーカーとしてはなかなか珍しいといえる。多くの新機能を備えたチップを実現する上で最も勝負に出たところは、TSMCの20nmプロセスへの移行ではないだろうか。Qualcommは、20nmプロセスは28nmプロセスよりもコスト効果が高いとしている。

 また、最も大きな賭けだったといえるのは、モバイル機器向けでLPDDR4 1600MHzをサポートし、25.6GB/秒の帯域幅を実現したことだ。これにより、高性能グラフィックスに必要な帯域幅とデータ幅だけでなく、OpenCL(Open Computing Language)アプリケーションも提供できるようになった。

 Qualcommは今回、独自のARMコア設計は行わず、Cortex-A57とCortex-A53を採用している。同コアを採用しているSoCメーカーがいるので、Qualcommとしてはそれほどのリスクを負うことにはならないだろう。

 またQualcommは、カメラのアップグレードを行い、ジャイロによる手振れ補正機能や3次元ノイズリダクション機能をサポートする他、1.2Gピクセル/秒のスループットを実現し、最大55Mピクセルのイメージセンサーを搭載した。これによって、4K映像をキャプチャすることが可能になったという。

本格的に4Kをサポート可能に

 ビデオプロセッサでは、H.265対応エンコーダのサポートを実現している。前世代品である「Snapdragon 805」では、4K映像をキャプチャすることはできても、直接4K対応スクリーンで視聴することはできなかった。Snapdragon 810は、フレームバッファ圧縮機能を備え、HDMI 1.4対応によって4K外部ディスプレイをサポートするため、4K映像を30フレーム/秒で、または1080pの映像を120フレーム/秒で伝送することができるという。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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