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京都議定書を「トイレ」と“あれ”で説明しよう世界を「数字」で回してみよう(13) 環境問題(5/9 ページ)

» 2015年03月13日 07時00分 公開
[江端智一EE Times Japan]

排出権取引(ET)

 これに対して、もっとも分かりやすい解決方法は、「他の国のトイレを貸してもらってウンコする」です。これが、排出権取引(ET)です。

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 これは簡単ですね。日本のトイレの便槽があふれそうになったなら、他の国のトイレに、日本がCO2というウンコをしにいくということです。他国のトイレ使用料(排出取引権)は、今、ウンコ(CO2)1トン当たり、1000円くらいです(2015年2月25日17:00のレート:7.67ユーロ=1013円/トン)。

 当然ですが、これは数値目標のある国同士でしか使えません。数値目標のない国が、勝手にトイレを貸せるようにしたら、日本は排出量を94%どころか0%にできてしまいます。

 排出権取引の理屈は簡単なのですが、問題もありました。

 例えば、各国は、ロシアを京都議定書に引き込む際に、削減目標をかなり甘く設定したのですが、そもそも効率の悪かったロシアの工場はちょっとした工夫で簡単にCO2を削減でき、また1998年にロシア財政危機が発生して産業が停滞し、その結果CO2排出量が激減した為、ロシアのトイレにはまだまだ余裕がありました。

 つまり、ロシアは、余ったトイレのレンタルでひともうけできる状況にあったのです。

これを面白くないと思った国が中国でした。「アメリカのウンコとロシアのトイレでひともうけ! ふざけんなぁ!!」と叫んで、一時は排出権取引そのものがつぶれかかりました。

 しかし、この取引ができなくなれば、京都議定書の発効自体が危うくなります。

 ここでアメリカが外交手腕を発揮して、なんとか中国を押さえて排出権取引を成立させました(そのアメリカが京都議定書から脱退している、というのも皮肉な話ですが)。

 しかし考えれば分かるのですが、トイレの貸し借りでは、世界の温暖化ガスは全く減少しません。単にウンコをする場所が変わるだけのことですから。

 ですから、京都議定書では、世界中のウンコの総量を減らす目標を掲げています(1990年のウンコの総量を基準に、全体の5%削減)。つまり、世界中のトイレだけでは、世界中のウンコを収納できないように仕組んだのです。つまり京都議定書は、――「お前ら、頑張らね〜と、ウンコが街中に流れ出すぞ」―― という極限状況を作ったわけです。

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