電卓で世界トップシェアを誇るのがカシオ計算機(以下、カシオ)だ。同社の歴史は、電卓と深く関わりがある。そもそも、カシオ設立のきっかけとなったのが、電卓の源となるリレー計算機だったからだ。
このリレー計算機「14-A型」は1957年に開発されたもので、14桁の四則演算が行える。この桁数の四則演算をリレーで行うには、1000個くらいが必要だといわれている。14-A型は2進・5進法を用いることで、わずか341個のリレーでこの演算性能を実現した。
14-A型は、電動計算機の“対抗馬”として開発された。歯車やレバーをぎっしりと詰め込んだ電動計算機は、最高レベルの精密機器とうたわれていたが、計算が始まると、メカニカルな機構ゆえにどうしても騒音が発生してしまう。しかも、1回の乗算/除算には約10秒を要した。一方で14-A型は、サイズの小型化という面では電動計算機には、まったくかなわなかったものの、計算時間が5〜6秒と速く、リレーを使っていることから無音だった。これによって、現在の物価で換算すれば数百万円に相当する「48万5000円」という価格にもかかわらず、官公庁や研究所、大手企業などで採用が進んだのである。
この14-A型、なんと、開発から60年近くたった今でも動くものがある。カシオの創設者である樫尾俊雄氏の発明品や資料を展示する「樫尾俊雄発明記念館」(東京都世田谷区)に置かれている1台だ。
同記念館に展示されている14-A型は、かつて、ある建設会社が米軍基地内で建物の寸法を計算するのに使っていた。その建設会社は14-A型を約60年保存していたが、樫尾俊雄発明記念館ができるという話を聞きつけ、寄贈してくれたのだ。カシオでは、この14-A型を再び動かそうというプロジェクトが発足し、80歳を過ぎた当時のエンジニアまで登場して14-A型の再稼働に成功したという。
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