理化学研究所(理研)と東京工業大学の共同研究チームは、非対称な光学迷彩を設計する理論を構築した。新たに実証した理論では、外部からは光学迷彩装置内にいる人間や物体は見えないが、内部からは外部を見ることが可能となる。
理化学研究所(理研)と東京工業大学の共同研究チームは2015年6月、非対称な光学迷彩を設計する理論を構築したと発表した。新たに実証した理論では、外部から光学迷彩装置内にいる人間や物体は見えないが、内部からは外部を見ることが可能となる。
今回、非対称な光学迷彩装置を理論的に実証したのは、理研の理論科学研究推進グループ階層縦断基礎物理学研究チームの瀧雅人研究員と、東京工業大学量子ナノエレクトロニクス研究センターの雨宮智宏助教および荒井滋久教授らの共同研究チームである。
光学迷彩は、光を自在に曲げられる装置を使って、物体や人間を光学的に見えないようにする技術である。これまで提唱されてきた光学迷彩装置は、外部のどの方向から見ても装置内部に隠れている人間や物体は見えないようにすることができる。同時に、内部には光が入ってこないため、中にいる人間も外部を見ることはできなかった。
これに対して共同研究チームは、外側から装置の内部は見えないが、内部からは外部を見ることができる「非対称性」の装置を実現するための理論を構築した。この研究の基礎となったのが、2012年にスタンフォード大学の研究グループが提唱した「光子に作用するローレンツ力」の概念だという。これは、光を捕捉する光学的な共振器を格子状に配置して、その共振器間を光が曲がりながら伝搬するという理論モデルである。
共同研究チームは、この格子共振器を拡張して、電場に相当する効果を発生させる光学格子共振器を用いた理論モデルを構築した。この論理モデルで検証したところ、光があたかも一般的な電磁場中を運動する電子のように振る舞い、光学格子共振器のパラメータを調整すれば、かなり自由な伝搬光路を実現できることが分かった。磁場が及ぼすローレンツ力によって完全反対称な光路を実現できるとみている。さらに、電場から受けるクーロン力に相当する力で光路を制御することにより、より多様で非対称な光の伝搬経路を実現できることも分かった。
なお、今回の研究成果は米国の科学雑誌「IEEE Journal of Quantum Electronics」に掲載され、2015年3月/4月号の表紙に選ばれた。
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