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デバイス内の熱輸送現象の解析を可能に、理研が新理論を構築新技術

理化学研究所は、デバイス内の熱流や温度差によって生じる熱輸送現象の解析を可能とする理論体系を構築した。熱輸送現象による電流やスピン流などを高い確度で予測できることを示した。

» 2015年05月20日 13時45分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

 理化学研究所は2015年5月、デバイス内の熱流や温度差によって生じる熱輸送現象の解析を可能とする理論体系を構築したと発表した。この理論を活用することで、電子の輸送現象と同じように、熱輸送現象の解析も容易に行うことが可能になるという。

 理化学研究所の創発物性科学研究センタースピン物性理論研究チームのリーダーを務める多々良源(たたら・げん)氏は、電磁場の理論と同様にベクトルポテンシャルと呼ばれる変数を導入することで、熱輸送現象を扱う新しい理論体系を構築した。この理論を用いて、熱輸送現象による電流やスピン流などを、高い確度で予測できることを示した。

 ベクトルポテンシャルには、電流を生み出す働きがあるという。この効果を電子の輸送現象の理論体系に組み込んで電子の動きを解析すれば、デバイス内部における電気信号の解析や、磁気記録デバイスにおける情報の読み書き特性などを評価することが可能となる。

 多々良氏は、電場の代わりに温度差によって生じる電流やスピン流といった熱輸送現象について、温度差と熱を運ぶ熱流の特性をベクトルポテンシャルで表し、理論を定式化することに成功した。この定式化によって、熱輸送現象を容易に解析することが可能となり、これまで推測とされてきた「金属中の電子に対して、電場と温度差の効果は同様に働く」という直観的な期待を裏付けることになった。

「金属中の電子に対して、電場と温度差の効果は同様に働く」という概念図 出典:理化学研究所

 さらに、熱輸送現象の問題は、ある近似値の範囲でアインシュタインの一般相対性理論と全く同じ論理的構造を持っていることも明らかになった。

 多々良氏は今回の研究成果を基に、今後はデバイス中の熱を効率よく輸送する仕組みや物質の設計、熱による温度差を用いた新しいデバイス動作の可能性、などを研究していく方針である。

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