例えば、試験をしなくても、成績が悪いであろう生徒を推定できるという。より密な指導が必要な生徒をその場で見分けることができれば、不足しがちな授業時間を活用しやすくなるだろう。
具体的には、タブレットのなぞり方の違いを見る。記憶成績が良い生徒と、そうでない生徒は、タブレットのなぞり方が違うことが分かってきた(図4)。文章となぞる位置がずれている生徒は成績が良くないことが多いことが分かった。
なぞる指の速度や加速度を測定した結果、速度よりも、加速度の方が成績に与える影響が強いことが分かったという。なぞりの総量はあまり関係がないことも明らかになりつつあるとした。
丸谷氏の研究グループがなぞり動作に注目した出発点はこうだ。印刷された文章とは違う効果をタブレット上のテキストに追加できないかという問題意識である。
紙に書かれた文章は、ほとんどの場合、全ての文字が同じ濃さで印刷されている。タブレットであれば、指で触った部分を徐々に出現させる・消去することが可能になり、余韻や抑揚といった読文印象が与えられるのではないかという仮説があった*2)。
その結果、読み手に与える心理学的な効果を解き明かすことができた。2013年時点の研究成果だ。触ってから文字に変化が現れるまでの時間、変化が現れてから最大の濃さに達する時間、最大の濃さを維持する時間、濃さが減少する時間をさまざまに変えて、印象を聞き取り調査した。
まず分かったことは、なぞりと表示の間に遅延があると悪影響が生まれることだ。
*2) テレビ放送などでは、キャプションなどで徐々に現れて消える文字を効果的に利用している。しかし、効果を測定した研究はこれまでほとんどなかったという。
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