さらに、Xiaomiの投資目的は、ベンチャーキャピタル(VC)のようにROI(Return On Investment:投資対効果)を迅速に達成することではない。同社の使命は、多様性に富んだ独自のエコシステムを構築することにある。Xiaomiと協業する企業が増加すれば、同社のエコシステムに参加する企業の数も増えることになる。
さらに重要なのが、Xiaomiのエコシステムに参加している企業が開発した製品の大半は、インターネット接続機器であることから、Xiaomiのスマートフォンから遠隔操作したり、同スマートフォンに制御アプリをダウンロードしたりする場合が多いという点だ。こうした製品は、XiaomiのクラウドサービスAPI(Application Programming Interface)を利用するように設計されている。
Lin氏は、「当社のエコシステム参加企業は、必ずしも当社のサービスAPIを利用する必要はない。もちろん、独自機能を搭載して、『iPhone』などの他のスマートフォンに接続しても構わない。要は、インターネットによって、ビジネスモデルをはじめとするあらゆるものがオープンになったということだ」と述べる。
投資コミュニティはこれまで、Xiaomiがどのような投資戦略を展開し、どの企業を選んでエコシステムに参加させているかに注目してきた。
Xiaomiに選ばれてエコシステムに参加した企業は、他のファンドからの投資も得られる傾向にある。
Lin氏は、「米国のベンチャーキャピタルはしばしば、ここ北京まで当社を訪ねてくる。当社が特定の企業に投資した理由を確認し、その企業の価値を知るためだ」と述べる。
Xiaomi特有の戦略として挙げられるのが、業務支援を提供するという点だ。同社のサポートは、多岐にわたる。例えば、
などが挙げられる。
米国の一部の業界観測筋にとっては、Xiaomiのこのような戦略が、マイクロマネジメント*)であるかのように映るという。少数の株式を保有しているにすぎない企業が、異常なレベルまで干渉しているように見えるのだ。
*)上司が部下の仕事に強く干渉すること。
しかし、中国の新興企業にとって、Xiaomiの強い影響力やアドバイス、実績、細部への配慮などは、“渡りに船”だといえるだろう。米国の新興企業は、IndiegogoやKickstarterなどのクラウドファンディングプログラムを利用して、市場の興味を測ることができるが、中国の新興企業にとっては、Xiaomiの力がよりどころとなっている。
Xiaomiは、投資先企業の選定を専業とする小規模チームを設けている。またLin氏によると、エコシステム企業と協業するためのチームもあるという。同氏は、「Xiaomiは、さまざまな企業に対し、製品定義を見極めたり、特定の材料を使用した製品などの開発を手掛けていく上でのサポートを提供できることを、誇りに思っている」と述べる。
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