EE Times Japan創刊10周年を記念し、主要技術の変遷と将来を紹介する。太陽電池は燃料を必要としない未来の技術としてもてはやされてきた。しかし、国の産業政策は必ずしも成功してはいない。では技術開発の進展はどうだったのか。これまでの10年とこれからの10年を紹介する。
EE Times Japanでは、最新技術を中心に何度か太陽電池を取り上げてきた。2005年の創刊から10年を記念し、太陽光発電の歩みと、技術の流れ、今後の技術開発の方向性を解説する。
太陽電池は戦後に発明された技術だ。当初は人工衛星や灯台など、長期間にわたり、独立して動作しなければならない機器で主に使われていた(図1)。
一般的な電力源として利用しようという動きが始まったのは、1970年代のオイルショックからだ。石油をなるべく使わない技術として期待が掛かった。太陽が地球を照らす光を1時間分だけ発電に利用できれば、世界全体の1年間の電力需要を賄うことができる。もちろん、実際に利用可能な光はずっと小さい。それでも砂漠に巨大な太陽光発電所を建設し、超電導送電で各地に供給するという夢が描かれた。
国内で実用的な電力源としての取り組みが始まったのは1994年だ。資源エネルギー庁所管の新エネルギー財団(NEF)による住宅用太陽光発電システムに対する助成制度である。助成制度は成功し、1kW当たりのシステム価格が、1993年の370万円/kWから、2005年には66万円/kWにまで順調に下がっていった。
だが、状況は2005年に暗転。補助金がこの年に廃止されたからだ。順調に伸びていた国内出荷量は2006年から下り坂になる*1)。それまで世界の生産量の半数を占めていた日本メーカーの地位*2)も低下し始めた。システム価格は下がらなくなり、かえって上昇していく(図2)。
*1) 同時期にエネルギーに対する国の政策が原子力重視に切り替わっている。例えば地熱発電研究に対する国の予算措置は2003年からなくなった。
*2) 当時の世界生産量上位5社はシャープ、ドイツQ-Cells、京セラ、三洋電機、三菱電機だった。現在は上位5社を全て中国企業が占める。
国の普及促進策はこの時点で失敗したといってよいだろう。状況があまりに悪化したこともあり、2009年には従来型の補助金が再開している。
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