当時の政策や市場の動向は分かった。では技術開発を促す政策はどうなっていたのか。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2004年に太陽光発電に関する技術ロードマップ「PV2030」を公開。変換効率や発電コストの目標を示している。
基本的な開発戦略はこうだ。最終目標は火力発電に匹敵する発電コストを実現すること。3つの技術要素を改善することで達成する。まずは高い変換効率だ。次に製造コスト(量産技術)。最後にシステムの寿命だ。3つの要素が組み合わさり、1kWh当たりの発電コストを下げることができると考えた。
太陽電池の半導体材料は、当時も現在も単結晶シリコンや多結晶シリコン(図3)が主流だ。加えて当時は薄膜シリコン太陽電池の技術進歩にも大きな期待が掛かっていた*3)。
*3) 後ほど取り上げるEE Times Japan 2008年9月号では、米Applied Materialsの「SunFab」装置を紹介。5.7m2のガラス基板上に太陽電池を一括成膜できる装置だ。「同社が2010年までに1W当たり1米ドルの発電コストを目指す」と書いている(2010年に薄膜シリコン太陽電池のターンキー事業から撤退)。
PV2030には、2010年、2020年、2030年の目標が掲げられていた*4)。2020年を例に挙げよう。多結晶シリコンセルの変換効率は25%(モジュール19%)。モジュールの製造コストは75円/W。寿命は30年だ(図4)。
*4) NEDOは2009年にPV2030の目標を一部修正した「PV2030+」を公開している。修正点は3点。第1に2050年までの見通しを追加、第2に実用モジュールの変換効率の目標値達成年を前倒しした。具体的には2020年の変換効率の目標を2017年とした。第3にグリッドパリティについて目標設定を曖昧にした。
これによって2020年には発電コスト14円/kWhが達成できるとした。これは家庭用電力料金(23円/kWh)よりも安く、業務用電力料金に匹敵する値だ(図5)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.