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太陽電池、これまで10年これから10年(前編)『EE Times Japan 10周年』特別編集(6/6 ページ)

» 2015年07月01日 10時00分 公開
[畑陽一郎EE Times Japan]
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化合物半導体が追い抜くか

 停滞するシリコン太陽電池の地位を急速に脅かしているのが、化合物系の太陽電池だ。世界市場で量産規模に優れるのはそのうち2つ。銅とインジウム、セレンを主に使うCIGS(CIS)。もう1つはカドミウムとテルルを使うCdTeである。

 PV2030では、CIGSの変換効率を2020年時点で25%(セル)、18%(モジュール)としていた。CISの最大手企業であるソーラーフロンティアは2014年に小面積セルで20.9%の記録を発表している。図10の傾向を見る限り、多結晶シリコン太陽電池のような停滞は感じられない。

 米FirstSolarが開発、製造、販売するCdTe太陽電池は、国内にはほとんど導入されていない。しかし、米国や欧州を中心に累計10GW以上を設置。多結晶シリコン太陽電池と競合している。CdTeは国内に未導入だったことから、PV2030(PV2030+)ではほとんど触れられていない。だが、変換効率や製造コストの改善は著しい。

 実際に世界市場で1W当たりのモジュールの価格が1米ドルを初めて下回ったのはCdTe太陽電池だ。2009年に0.98米ドル/Wだと発表している。PV2030で2010年に達成を目指していた100円/Wをクリアした形だ(2010年の為替相場は1米ドル=88円)。

 当時は安価であるものの、シリコン太陽電池と比較して変換効率では劣るという評価だった。CdTeは当初から変換効率があまり伸びないと考えられていた。NEDOの資料によれば、2010年時点のCdTeの変換効率は最大11%(モジュール)*11)と低い。

 だが、2015年1月には研究段階のセルで21.5%の世界記録を達成、2015年6月15日にはモジュール変換効率18.6%を達成したと発表している。図10にあるように変換効率の改善速度が著しい。

 「太陽電池、これまで10年これから10年(後編)」では、そもそもなぜFirstSolarがCdTe太陽電池を選んだのか、CdTe太陽電池にはどのような可能性があるのかを、同社の最高技術責任者に聞いた。

*11) 同時期の他の変換効率は以下の通り。単結晶シリコン(最大20%)、多結晶シリコン(最大15%)、アモルファス薄膜シリコン(最大9%)、CIS(最大12%)とある。

⇒「太陽電池、これまで10年これから10年(中編)」へ

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