米トランプ政権や中国「DeepSeek」の登場など、半導体市場の先行きを見通すことはますます困難になっている。本稿では、これらの不確定要素の影響を考慮しながら、今後10年間の半導体市場の予測に挑戦する。
本連載の直近2回の記事「『2029年に「シンギュラリティ」が到来か 〜半導体は「新ムーアの法則」の時代へ」「ローエンド型破壊イノベーションを起こしたDeepSeek 〜ウエハー需要への影響は」では、2025〜2030年における半導体市場の動向および、ウエハー需要予測を取り上げた(図1、図2)。ただ、一部の読者の方から、特に図版の解釈をめぐって「分かりにくい」という声をいただいた。また「5年後の2030年だけでなく、10年後の2035年までの予測もしてほしい」という要望も寄せられた。
そこで今回は、前回の反省点を踏まえつつ、今後10年の予測に挑戦してみたい。
今後10年間を予測する上で、2つの不確定要素がある。2025年1月20日に発足した第2次トランプ政権と、同日に公開された中国の生成AI「DeepSeek」である。これらの2つの要素が世界の半導体市場やウエハー需要にどのような影響をもたらすかは、現時点では不明である(この2大事件が同日に起こったことは単なる偶然なのだろうか?)
そこで本稿では、まずこれらの影響を考慮せずに、2035年までの世界半導体市場とウエハー需要予測を行う。その後、「第2次トランプ政権」と「DeepSeek」が市場に与える影響について考察することとする。
図1には、2025〜2030年における各種電子機器向け半導体および世界半導体の需要予測が示されている。さらに、それぞれの年率成長率も記載されている。
そこで、この年率成長率が2025年以降10年間続くと仮定して、2025〜2035年における世界半導体市場の予測と、その内訳(各種電子機器向け半導体)を示す(図3)。この図から、2035年には「サーバ、データセンター&ストレージ向け」の半導体需要が826億ドルに拡大することが分かる。この市場規模は、2025年の世界半導体市場全体を上回る水準である。
図4は、図3の予測の推移を、各種半導体別に示したものだ。このグラフから、「サーバ、データセンター&ストレージ向け」(青いグラフ)の半導体需要が、他の電子機器向け半導体と比べて圧倒的な成長を遂げていることが見て取れる。
さらに図5は、各種半導体需要が半導体需要全体に占める割合が、今後10年間でどのように推移していくかを示している。この図から「サーバ、データセンター&ストレージ向け」の半導体需要は、2025年に半導体需要全体の22.9%、2030年に34.3%、2035年には47.4%にまで拡大することが分かる。つまり、2035年には世界の半導体需要の約半分を「サーバー、データセンター&ストレージ向け」の半導体が占めることになる。
この予測の正確性については、今後検証が必要であるが、それにしても世界半導体市場における生成AIの影響は計り知れないというのは確実に言えるだろう。
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