アルプス電気は、3つのコア技術である「HMI(ヒューマン・マシン・インタフェース)」「コネクティビティ」「センサー」を軸に、車載、ホーム&モバイル、産業機器/ヘルスケア/エネルギーの各市場に注力していく。
とりわけ非常に強みを持っているのが、タクトスイッチなどのHMI関連の技術だ。タクトスイッチは、携帯電話機やリモコンから自動車まで、さまざまなところで使われている。アルプス電気によれば、「1軒家に100個はある」という。
スイッチは、単純そうに見えて奥が深い世界だ。ニーズだけをみても、「押した時にカチッという音が出るもの」「音が出ないもの」「しっかりと押した感覚を得られるもの」など、顧客によって大きく異なる。また、相当な回数を押すので、耐久性も求められる部品だ。「クルマ用であれば20万〜30万回、スマートフォンでは50万回、ゲーム用コントローラでは100万回押しても壊れない、という耐久性が必要になる」とアルプス電気は語る。それ故、非常に高い品質を求められることになる。
センサーについては、同社が2007年9月にTDKに譲渡した磁気ヘッド技術で培ってきたノウハウを生かした製品を展開している。「これだけセンサーのバラエティをそろえたメーカーはなかなかいない」と同社は語る*)。
*)関連記事:通信モジュール+センサーで多様なウェアラブル機器を実現――アルプス電気
約10年前には、「リカロイ」という金属磁性材料を開発している。アルプス電気のグループ会社であるアルプス・グリーンデバイスと東北大学が共同で開発したものだ。実は、当初はこの新しい材料を「何に使えばよいのか分からなかった」(アルプス電気)という。磁気損失が極めて小さく、ノイズを効率よくカットできるという特性があるのは分かっていたので、インダクタに応用すればいいのではないか、と思い立ち、リカロイを使ったパワーインダクタが登場したという。ノートPCのCPU、サーバ、据置き型ゲーム機などの大電流用DC-DCコンバータ、POL(Point of Load)電源などに向け、「GLMDシリーズ」「GLMCシリーズ」を展開している。
リカロイの特性を最も生かせるのが、SiCやGaNを使った次世代パワーデバイスだ。高いスイッチング周波数を持つSiCやGaNパワーデバイスと、リカロイを使ったリアクトルを組み合わせることで、DC-DCコンバータを大幅に小型化することができる。「CEATEC JAPAN 2013」では、アルプス・グリーンデバイスとローム、Mywayプラスが、従来のDC-DCコンバータに比べて1/10のサイズ、1/5の重量を実現した小型双方向DC-DCコンバータの展示を実施した*)。アルプス・グリーンデバイスは2015年5月に設立5周年を迎えたが、ビジネスという点では決して順風満帆というわけではないという。ただ、次世代パワーデバイス、特にSiCデバイスは順調に製品が増えてきていることから、これからが正念場だとしている。
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