大阪大学大学院の小林研介教授らによる研究チームは、グラフェン(単層グラファイト)中に形成されたpn接合での量子ホール状態の輸送現象にパリティ効果があることを理論的に予測し、実験によって検証することに成功した。また、グラフェンのpn接合における量子ホール状態を用いて、量子干渉素子を実現できる可能性も示唆した。
大阪大学大学院の小林研介教授らによる研究チームは2015年6月、グラフェン(単層グラファイト)中に形成されたpn接合での量子ホール状態の輸送現象にパリティ効果があることを理論的に予測し、実験によって検証することに成功したと発表した。
今回は、大阪大学大学院理学研究科の小林教授と東京大学大学院工学系研究科の松尾貞茂助教が、京都大学化学研究所の小野輝男教授及び物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の塚越一仁主任研究者らの研究グループと共同研究を行った成果である。
研究チームはまず、グラフェンpn接合上にアンチドットと呼ぶ穴を設けた場合に、電子の輸送がどのような影響を受けるかを評価した。この結果、pn接合における量子ホール端状態の完全混合が生じるケースでは、pn接合の数が「偶数」か「奇数」かによって、アンチドットの数に対する伝導度の振る舞いが決まること(この現象をパリティ効果と呼ぶ)を論理的に発見した。
次に、デバイスを試作してパリティ効果を実証した。グラフェンにアンチドットを作製し、その上にトップゲート電極を設けることで、アンチドットの真上にpn接合を形成する構造とした。試作したデバイスで、pn接合の本数が1/2/3本の時の伝導度を測定。この結果、実験で得られた伝導度は、理論値と一致することが明らかとなり、研究チームが発見したパリティ効果が実証された。
さらに研究チームは、パリティ効果を反映して、pn接合が偶数個と奇数個の場合で、それぞれ異なる光学干渉計との類似性があることを指摘した。このことはグラフェンのpn接合における量子ホール状態を用いて、さまざまな量子干渉素子を実現できる可能性を示したことになる。
今回の研究成果は、2015年6月30日(英国時間)に「Scientific Reports」オンライン版で発表された。論文タイトルは「Parity effect of bipolar quantum Hall edge transport around graphene antidots」。
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