米イリノイ大学が、細菌の胞子を高感度の湿度センサーに応用できる技術を開発した。胞子をグラフェン量子ドットで被膜するというもの。冬眠状態の細菌が、湿度の変化に敏感に反応するという性質を利用している。
現在最も高性能とされている湿度センサーには、湿度の変化に伴い収縮/膨張するポリマーが使われている。しかし、米イリノイ大学シカゴ校(University of Illinois at Chicago)の研究グループは今回、「細菌胞子にグラフェン量子ドットを被膜することによって、ポリマーを使った湿度センサーよりも10倍感度が高く、真空状態、超低湿度などの環境にも耐えられる湿度センサーを実現することが可能になる」と発表した。
この研究に携わっているVikas Berry氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「われわれが今回実現した細菌胞子は、多くのポリマーよりも素早く湿度に反応する。これまでさまざまな種類のポリマーについて実験を重ねてきたが、細菌胞子はそれらを打ち負かす能力を備えていることが分かった」と述べている。
研究チームは、この細菌胞子ベースの生物電子デバイスを「Nano-Electro-Robotic Device(NERD)」と呼んでいる。
NERDは、基本的に冬眠状態にある細菌だ。濡れた状態になると冬眠から目覚める。そのため、湿度の変化に対して感度が著しく高いのだ。さらに、ほとんどのポリマーでは感度が得られない、超低湿度の領域でも感度を得ることができる。実際、ポリマーベースの湿度センサーとは反対に、低湿度の環境下では一段と感度が高まるという。
今回の研究グループには、同大学の大学院生Phong Nguyen氏、米ライス大学の研究員であるT. S. Sreeprasad氏などが参加している。研究資金は、米国立科学財団(NSF:National Science Foundation)や、ONR(Office of Naval Research、米海軍海事技術本部)、米カンザス大学が提供している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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