2次元のスペクトログラムで得られた式は、複素振幅を測定、再生する手法である「周波数分解光学ゲート法(FROG:Frequency-Resolved Optical Gating)」に酷似していたという。同研究チームは、この類似性を利用してFROGのアルゴリズムを改良し、実験で得られた2次元のスペクトログラムで得られた式に適用した。
その結果が図3の黒丸である。水素分子イオンが振動を始める前の波束が瞬間的に生成されたと仮定すると、位相の黒丸は横軸の束縛エネルギーに対して直線状に並ぶ。しかし、図3の黒丸は曲がって並んでおり、水素分子イオンの振動波束の位相が横軸の束縛エネルギーに対して位相変調を受けていることを示している。
この位相変調は各波動関数が生じる時刻の遅延と解釈でき、図3では約1〜2フェムト秒(=1000兆分の1〜2秒)遅れて生成されていることを示唆している。同様の結果が同位体分子である重水素イオンでも得られていることから、「水素分子が振動を始めるには約1000兆分の1秒という、これまでの常識よりはるかに“長い”準備時間が必要である」(同研究チーム)と結論付けた。
同研究は、イオン化による分子振動波束の生成過程を、使用する光パルスによって制御可能になることを示唆している。分子運動の光制御は分子中の電子を光で励起(れいき)することが重要な役割を果たしていたが、励起よりもはるかに早く応答するイオン化が新たな高速の光制御技術をもたらすかもしれないという。
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