ルネサス エレクトロニクスは車載カメラネットワーク用SoC「R-Car T2」を開発したと発表した。Ethernet AVBに準拠し、独自に開発したH.264エンコーダで映像を高速に圧縮することによって、1280×960ピクセルのHD映像を1ms以下の遅延で出力できるという。
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2015年9月、車載カメラネットワーク用SoC「R-Car T2」を開発したと発表した。カメラ映像をネットワーク化することで、1台のカメラを複数のECU(Electronic Control Unit)で共有でき、自動車1台当たりのカメラ搭載数を削減できる。
R-Car T2は、Ethernet AVBを構成するIEEE802.1AS、IEEE802.1Qav、IEEE802.1Qat、IEEE1722の規格に準拠。独自に開発したH.264エンコーダで映像を高速に圧縮することによって、1280×960ピクセルのHD映像を1ms以下の遅延で出力できるとしている。
現行のLVDS(Low Voltage Differential Signaling)方式はピアツーピアで接続が行われている。帯域が4Gbpsなので、遅延の生じる圧縮処理を行わず、非圧縮で映像を出力できるのがメリットだ。しかし、ピアツーピア接続のため、複数のECU間でカメラを共有することはできなかった。
Ethernet AVBの帯域は100Mbpsのため、車載カメラの映像を圧縮処理する必要がある。しかし、従来の技術では圧縮に時間がかかり、高度なリアルタイム性が求められる自動車のシステムには活用できなかった。
ルネサスは今回、高画質な映像を、低遅延で圧縮する独自のH.264エンコーダを開発。1ms以内に圧縮処理し、ネットワークに出力できるようになった。出力まで1msを実現したことにより、「ネットワーク環境やH.264デコーダ、ディスプレイなどの条件によって異なるが、カメラ撮影から単純にディスプレイ表示させるまでに要する時間を30フレーム/秒の1フレーム(約33ms)以内に抑えられるようになった」(ルネサス)という。1フレーム以内の遅延は、人には全く認識できない遅延であり、ほぼ遅延なしのリアルタイムの映像伝送を、Ethernet AVB経由で実現したことを意味する。
イーサネットに置き換えることのメリットは複数のECUに映像を同時配信できるだけではない。イーサネットは、ピアツーピア接続ではないため、ECUワイヤーハーネスの低コスト化、軽量化を実現する。LVDSのシールドありの同軸ケーブルに対して、UTPケーブルはシールドなしのツイストペアケーブルとなっている点も同様だ。
さらに、機器の追加や取り外しが容易に行えるため、カメラの追加や表示機器の選択など必要に応じてシステムの拡充が可能になる。
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