次に私は、お金を振り込んだ、三井住友銀行の小山支店に電話しました。
「ネット詐欺の被害にあったと思います。急ぎ、その口座を凍結してください」と申し上げたところ、「この度は、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。ご連絡いただき、誠にありがとうございます」という、まずは気持ちの良い対応。
銀行の方(以下、行員という)は、私から口座番号と振込の時間を尋ねた後、いったん電話を切ってから、私の電話にコールバックしてきました(本人確認のための常とう手段)。
行員:「ご指定いただいた口座は、既に凍結されているようです」
江端:「それは、私の連絡の前に、詐欺の被害に会われた他の方が、既に手続きをされたということでしょうか」
行員:「そのようです」
(なるほど、私の前に動いた人がいたのか。ヤツらが、全てのドメイン名を消去してネット上の店舗の全てを消滅させたのは、口座が凍結されたからかもしれないな)と思いつつ、気になっていたことを質問してみました。
江端:「詐欺の被害に遭ったと思った人が連絡さえすれば、口座はすぐに凍結されるのですか?」
行員:「いえ。そうではなく、当行では、警察からのご指導によって、そのような措置を取っております」
江端:「ああ、警察の要請を受けて、裁判所から銀行に執行命令書が来るわけですね」
行員:「いえ。警察からの要請だけです」
江端:「ええっ! それって、司法の判断なく、警察からの要請だけで口座が凍結できるということですか!?」
びっくりしました。
犯人を逮捕する時だって、現行犯逮捕以外は、裁判官から発付された逮捕状が必要ですから。
今回、この手続を可能とする法律「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」(通称「振り込め詐欺救済法」といいます)を一通り読んでみました。
第3条1項に、「捜査機関等からの情報提供」の他に「金融機関の独自判断」でも、口座が凍結できる旨の記載があり、さらに、第2項には、銀行間で詐欺サイトの口座情報を共有できる旨も、記載されていました。(ゴチャゴチャした手続きをふっ飛して、機動性の高い運用ができるようにしているんだなぁ)と感心しました。
行員:「後日に、江端様に詳しい事情をお伺いするために、お電話差し上げることになりますが、よろしいでしょうか」
江端:「ええ、もちろんです」
行員:「それと、口座が凍結されても、江端様のお金の全てが戻ってくるわけではないことを、あらかじめご理解いただけますようお願い致します」
消費者センターに続いて、銀行からも同じ様に念を押されました。
きっと、銀行も、振込詐欺にあった人との対応で、相当に嫌な目に遭ってきたんだろーな、と思っていました。銀行だって、口座の凍結前に、詐欺師に現金を引き出されてしまったらどうしようもないのですが、その事情が理解できない(理解したくない)人がいっぱいいるのでしょう。
江端:「分かっています。今回ご連絡したのは、『お金を取り戻す』ことではなく『詐欺サイトの口座をたたきつぶす』ことが目的でしたので」
と答えると、随分、恐縮されていたようです。
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