行員:「……様? 江端様? 聞こえておられますか?」
江端:「ああ、すみません。(1人で盛り上がって)ボーッとしていまして、もう一度お願いできますか?」
行員:「では、返金の手続きについて、最初からもう一度ご説明しますね」
―― え?
聞き間違えたのかと思って、思わず尋ねてしまいました。
江端:「私のお金、戻ってくるんですか? なんで? どうやって?」
行員:「あのですね。今回の口座凍結で、7万140円を差し押さえることができました。ですから、その中から江端様への損害額が支払われることになるのです」
江端:「え? じゃあ、私の被害額は、7680円だったから、全額戻ってくるということですか?」
行員:「残念ですが、そういうことではありません」
前述の「振り込め詐欺救済法」によれば、こんな感じになっているようです。
(1)まず、対象となるお金は、口座凍結で差し押さえることができた金額(今回は7万140円)だけになります。つまり、詐欺師によって既に引き出されたお金については、この法律では何もできません(もちろん、後日、詐欺師を特定できれば、不足分について損害賠償請求(民709条)の訴えができます)
(2)しかし、この口座で詐欺に遭った全ての人が救済の対象になります。詐欺師による現金の引き出しの前後は問われません(ということは、その口座の被害者の人数が多いほど、江端が得られる返金は少なくなる、ということです)
(3)ただし、銀行に被害の届け出をしないと、被害者としてカウントされません。なぜなら、振り込みした人を特定して連絡する手段がありませんし、「届け出をしていない」→「商品の到着を、今でも信じて待っている人」とみなせば、被害者として認定できないからです*)
江端の観点から見た「勝手な言い分」は、こんな感じになります。
(1)Bさんが、もっと早く動いてくれていれば、私が振り込む前に口座が凍結されて、私は詐欺に遭わなくて済んだんだけどな
(2)でもBさんが動いてくれていなければ、7万140円すら詐欺師に持っていかれたに違いないから、Bさんには感謝しなければ
(3)あとは、銀行に被害届を出す人が少ないといいな(私の取り分が多くなるから)
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