HPがIoT市場において担う役割は少ないようにも思えるが、Wall氏は、IoE(Internet of Everything:あらゆるモノのインターネット)の重要性を大いに確信していて、HPのPC事業とプリンタ事業とを交差させていくための方法を模索しているところだという。
同氏は、デジタルパッケージングなどの全く新しい分野をいくつか挙げながら、「いつか、1枚の紙から全ての内容が分かったり、繊維を見れば原本であるかどうかが分かるようになったりするだろう。物理的側面とデジタル的側面とを結びつけることにより、医療や法律、建設などのさまざまな分野において成し得ることは、まだたくさんある」と付け加えた。
短期的には、コアとなるPC市場が2015年に5〜10%縮小するとみられていることから、新生HP Inc.は今後、こうした状況に対応していく必要があるだろう。
Wall氏は、HPの回転型2-in-1 PCである「Spectre x360」が、モバイルコンピュータの新しい流れを生み出すだろうと述べている。だが残念なことに、AppleとMicrosoftが、「iPad Pro」と「Surface Pro」という、同じコンセプトの製品を出している。
HPの分社化については、やはり賛否両論があるようだ。市場調査会社Creative Strategiesのプレジデントを務めるTim Bajarin氏は、「HPの動きは、競合であるDellやLenovoとは逆行するものだ」と話す。Dellは2015年10月、ストレージの大手であるEMCを670億米ドルで買収すると発表した。一方のLenovoは、IBMのPCおよびx86プロセッサ事業部門を買収している。
「DellやLenovoは、PC事業とエンタープライズ事業をより密に連携しようとしている。彼らは、企業向けには、PC、サーバ、サービスを組み合わせた“ソリューション一式”として提供することが重要だと考えているからだ。PC事業は利益が少なくなっていて、収益性を確保するためにはサーバやサービスと強く結びつける必要性があることを考えると、HPの動きにはリスクがあるといえるだろう」(Bajarin氏)。
IHSでコンピュータおよびサーバ部門を担当する主席アナリストCraig Stice氏は、Bajarin氏の見解に異を唱える。「HPには強いブランド力がある。分社化しても、PCやプリンタ事業に大打撃を与えることはないだろう」(同氏)。「タブレット端末や、2-in-1 PCなどが登場したことで、PC市場は細分化している。PCメーカーが成功するためには、(PC市場の中で)どの市場に注力するのかをしっかりと定める必要がある」(Stice氏)。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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