今回はセッション27〜29を紹介する。セッション29では、生体組織分析デバイスや生体モニタリングデバイスに関する講演が行われる。Columbia Universityらの研究グループは、有機材料の発光ダイオードおよび光検出器を組み合わせた、脳血流量モニタリングシステムを発表する。同システムの厚みは、わずか5μmしかない。
2015年12月に開催予定の国際学会「IEDM 2015」から、カンファレンス3日目(最終日)である12月9日(水)の午前に予定されている一般講演セッションを解説する。9日午前の時間帯には、セッション25からセッション31までの7本のセッションが同時並行に進む。
前回は、セッション25とセッション26の講演を説明した。今回はセッション27(ナノデバイス技術)とセッション28(モデリングとシミュレーション)、セッション29(センサー、MEMSとBioMEMS)の講演をご紹介しよう。
セッション27(ナノデバイス技術)のサブテーマは「層状2次元材料とデバイス」である。このセッションはフォーカスセッションでもあり、全ての講演は招待講演となっている。
九州大学とPRESTO(Precursory Research for Embryonic Science and Technology)は、高品質なグラフェンをエピタキシャルCVD成長技術で実現する試みの現状を共同で報告する(講演番号27.2)。サファイア基板に堆積した(111)配向のCu(銅)薄膜を下地に使い、グラフェンのヘキサゴナル格子の配向を制御する。グラフェン以外の2次元材料に適用した結果も報告する予定だ。
EPFL(Ecole polytechnique federale de Lausanne:スイス連邦工科大学ローザンヌ校)は、2次元材料の二硫化モリブデン(MoS2)を活用したトランジスタ技術を解説する(講演番号27.4)。同じ2次元材料のグラフェンをベースとしてトランジスタ構造を作製する。MoS2はエネルギー・バンドギャップが存在するので、電流が簡単に飽和する他、電圧の利得が生じる。バンドギャップのないグラフェンと比べ、トランジスタ特性を得やすい。
Seoul National UniversityとSamsung-Electro Mechanicsの共同研究チームは、ロール・ツー・ロール方式でグラフェンなどの2次元材料の薄膜を製造し、パターン加工する技術を議論する(講演番号27.7)。大面積のシート状グラフェンを作製して適切な基板に転写し、パターンを加工する生産技術が要求されている。しかし現状の候補技術には一長一短があり、量産技術への適用には問題を抱えるとする。
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