TSMCが、中国の南京に12インチウエハー工場を設立するとして、台湾の投資委員会に申請書を提出した。世界最大規模の半導体市場でありながら、半導体のほとんどを輸入に頼っている中国の強い需要を取り込む考えだ。
世界最大のファウンドリであるTSMCは2015年12月7日(台湾時間)、世界で最も急速に成長している中国の半導体市場での強い需要を取り込むため、同国ではTSMC初となる12インチファブの建設を目指すことを発表した。
TSMCはプレスリリースの中で、中国内陸部の南京に12インチウエハー製造工場と設計サービスセンターを設立すべく、台湾経済部傘下の投資委員会に申請書を提出したと述べた。
TSMCのチェアマンであるMorris Chang氏は、リリースの中で、「中国半導体市場の急速な成長を考慮して、同国に12インチウエハー製造工場と設計サービスセンターを建設することを決定した。これにより、中国顧客に対し、より密接なサポートを提供することと、当社のビジネス機会をさらに拡大することを目指す」と述べた。
中国に製造工場を建設しようとする半導体メーカーは増加していて、TSMCもこの動きに追随する形となる。業界団体のSEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)によると、中国は世界最大規模の半導体市場の1つでありながら、「iPad」「iPhone」などのApple製品の組み立てに用いる半導体のほとんどを輸入に頼っている状況だ。
SEMIによると、Intel、Samsung Electronics、SK Hynixの他、SMIC(Semiconductor Manufacturing International Corporation)をはじめとする中国の半導体メーカーも、既に12インチウエハー製造工場を建設したり稼働したりしているという。
TSMCが建設する製造工場は、同社のIP(Intellectual Property)と企業秘密を守るため、100%自社で所有する計画だ。
TSMCによると、投資計画の総額は製造装置にかかる費用を含めて30億米ドルであるが、一部の装置は台湾にある既存の工場から移設されるという。また、中国政府から援助を受けことになっているため、同社の純投資額は結果的には30億米ドル以下になるようだ。
TSMCは、南京では比較的完全な半導体サプライチェーンが存在しているほか、技術者の豊富な人材プールがあると述べた。これらの要素に加え、地元政府に同社を支援する意志があることも、今回の決定を後押ししたという。
TSMCは、中国の新しい製造施設で12インチウエハーを毎月2万枚生産することを計画している他、2018年下半期に16nmプロセス技術の量産を開始することを目指している。また、設計サービスセンターを設立することで、中国に同社の設計エコシステムが構築されると見込んでいる。
TSMCの中国顧客(HiSiliconなどの半導体設計企業も含む)からの収益は、過去5年間で50%を越える年平均成長率(CAGR)で上昇している。
南京の新しい工場では1200人が働く予定だ。まずは台湾やTSMCの上海工場(8インチウエハー)から人員を派遣するが、南京工場が本格的に稼働したあとは、地元南京で従業員を雇用するとしている。
台湾政府は、雇用や技術が中国という政敵に流出することを懸念し、中国における投資を制限してきた。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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