次に、「社会と産業をささえるルネサスの新技術」と題して、ルネサスの執行役員兼第二ソリューション事業本部で本部長を務める横田善和氏が登壇した。同社は、社会のインフラとなる組み込みシステムの提供に力を入れており、2014年では産業向けマイコン世界出荷額で24%のシェア、産業向けSoCでは23%、ネットワークメモリでは20%と、いずれもシェアのトップを獲得している。
横田氏は今後の方針について、「当社の未来の実現におけるキーワードは“自律”である。当社のコア技術を通して、組み込みシステムをよりインテリジェンスにし、最終的には自律させることを目指している」と語る。
今まではセンサーを搭載した機器から得られたビッグデータは、全てクラウド上に送られて処理されていた。しかし、データの量があまりにも多く、データの質も悪いため、クラウドの応答性には1000ミリ秒といった多くの時間を要していた。その解決策として、クラウドとセンサーを搭載した機器の間でデータの処理を行う「Fog Computing」が用いられていたが、横田氏は「Fog Computingも100ミリ秒ほどの応答時間がかかるため、組み込みシステムにおいてはリアルタイム性で不十分だった」と語る。
そこで、同社が提案するのは、エッジデバイス側でデータの処理を行うことで、クラウドに必要なデータだけを送るといったシステムである。それを実現するのが、「R-INエンジン」としている。R-INエンジンは、32ビットCPU、リアルタイムOS(RTOS)、イーサネットアクセラレータをハードウェアとして構成。イーサネット通信とCPU負荷を同時に低減したことで、5〜10倍の高速処理が可能になるという。
また、同社は今回、R-INエンジンに人工知能(AI)を組み込み、エッジデバイス側で大量のデータから不具合や不良品の判断ができるようにした。同社の那珂工場(茨城県ひたちなか市)で行った実証実験では、異常検知において従来より6倍の精度の高い良否判定が可能になったという。
横田氏は、「組み込みシステムをさらに発展させ、目指す未来の実現のためには、インテリジェンスを加えていくだけでなく、AIもかけ合わせていく「e-AI」(Embedded Artificial Intelligence)が重要になるだろう」とした。
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