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自動車業界にとって5Gとは何か(前編)採用は2020年よりも、もっと先(2/3 ページ)

» 2016年02月15日 13時00分 公開
[Junko YoshidaEE Times]

5Gは、変革をもたらすのか

 McCormick氏は、「5Gは、大変革をもたらすかもしれない。初期解析の結果、5Gは、遅延が2ミリ秒を下回ったことから、DSRCの代替となる可能性がある。ただし、通信事業者に対して5Gデータプランの支払いをいとわないのであればの話だ」と述べている。

 これは、無視できない問題だ。Juliussen氏が指摘するように、「キャリアは、独自に利用できるDSRCの周波数枠を確保して、利益を上げたいと考えている。だが、DSRCは人命を守るための技術であり、利用者が無線通信の代金を支払うかどうかによって利用の可否が決められるべきではない」ものなのである。

 NXP Semiconductorsで革新的技術/V2Xプログラムを率いるAndrew Turley氏も、Juliussen氏に同意している。Turley氏は、「携帯電話事業者は、5G規格を1から全て作り直すよりも、5G規格の中にIEEE 802.11p規格とWi-Fiを取り入れる方が賢明だ」と述べている。

 5Gのミッションクリティカルな低遅延性能は、自動運転車に最適である。こうした要素によって、5Gは、より革新的で魅力的な次世代規格と見なされている。

 だが、新しい標準規格には課題がつきものであり、5Gも例外ではない。異なる業界のビジネスモデルに適応させる場合には特にそうだ。

 IHS Automotive TechnologyのJuliussen氏は、「自動車メーカーは5Gに何を求めているか」という質問に対し、「自動車メーカーはまだ、5Gに対応できる段階に達していない」と答えた。

 Juliussen氏は、「2020年までに5Gが展開されるとは考えにくいが、たとえ2020年までに展開されたとしても、自動車メーカーが採用するのはそれよりさらに3〜5年後になるとみられる。自動車メーカーは、“広い地域を網羅する実証された技術”と“手頃な価格”の両方を望んでいるため、採用時期は量産開始から数年遅れると予想されるからだ」と語った。

 こうした理由から、IHS Automotive Technologyは「当面(恐らく7〜10年後まで)は、自動車には2種類のワイヤレス接続機能が搭載されると」と予想している。

2種類のワイヤレス通信

 「1つは、車載制御システム用組み込みモデムで、もう1つは、スマートフォンを使って車載インフォテインメントやクラウドコンテンツに接続する方法だ」とJuliussen氏は説明する。

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 「モデムの通信コストは主に自動車メーカーが負担する。現行はもちろん、今後搭載されるであろうアプリケーションでも4Gほどの通信速度は必要ない。2つ目の、スマートフォンを使う場合の通信コストはドライバーが負担することになる。さらに、こちらの方がモデムよりも速い通信速度を求められるだろう」(同氏)。さらに、「従って、5Gスマートフォンは、5Gが組み込まれるよりかなり早い時期に、自動車に採用される可能性が高い」と付け加えた。

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