「前半」の後輩レビューはこちら
後輩:「いや、あらためて、『江端さん、一応、研究員だったんだなー』と思いまして」
江端:「『一応』って……」
後輩:「分かりますよ、江端さん。江端さんだって、一応、『すごいことやっている』かのように見せなければ、なかなか、研究員としてのご自分の仕事や能力をアピールできませんものね」
江端:「はい?」
後輩:「『ファジィ推論』、いいじゃないですか。このファジィ推論でダイエット用の仮想人格を作ったと言い張っているのは、世界中で江端さんだけなんでしょう?」
江端:「なんだって?」
後輩:「誰が、その推論エンジンのコード(プログラム)を解読できるんですか? それが、仮想人格として振る舞っていると証明できる人は、世界に何人もいないんでしょう?」
江端:「いや、少なくとも日本には、3桁のエンジニアがいると思うぞ*)……」
*)例えば、日本知能情報ファジィ学会のメンバーとか
後輩:「やっぱり江端さんは賢い! その3桁のエンジニアが、この「ダイエット」のコラムにたどり着く可能性は、絶望的に低い!! だから、江端さんの推論エンジンを検証する人は誰もいない!!」
江端:「……仮に、そうだとしたら?」
後輩:「江端さんは、仮想人格を開発できるエンジニアとして、社内や世間にアピールできる、と。もう本当に、江端さんったら、なんて、すごくて、ずるくって、エゲツない人なんでしょう。ホレてしまいますよ」
江端:「……」
後輩:「江端さんはやっぱりすごい人だ。江端さんは私の目指すべき指標であり、目的であり、崇拝の対象です。私は、一生、江端さんについて行きますよ!」
このプログラムを”v-ebata.cpp "という名前で保存して、”gcc -g v-ebata.cpp -o v-ebata” でコンパイルしてください。
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江端智一(えばた ともいち)
日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。
意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。
私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「こぼれネット」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。
本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。
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