水中に沈めて太陽光を当てるだけで、水を分解して水素と酸素を発生させる光触媒シートをNEDOなどが開発した。安価に量産が行えるスクリーン印刷による製造にも対応できる。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)と人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)は2016年3月10日、水中に沈めて太陽光を当てるだけで、水を分解して水素と酸素を発生させる光触媒シートを開発したと発表した。既に大量生産可能なスクリーン印刷法を利用した混合粉末型光触媒シートの塗布型化にも成功しているという。非常にシンプルな構造で、大面積化と低コスト化に適しているため、安価な水素を大規模に供給できる可能性がある。
開発した光触媒シートは、2種類の粉末状の光触媒と導電性材料をガラス基板に固定化した混合粉末型のもの。作成手順は、まず、可視光を吸収する水素発生用触媒と酸素発生用触媒の2種の光触媒粉末を混合してガラス基板上に塗布する。その上に導電層を蒸着して形成する。その後、導電層および光触媒層を剥離する粒子転写法プロセスにより作製する。この作製方法は、光触媒と導電層の接触抵抗を比較的容易に軽減することができる他、真空工程は一度で済み、ほぼ大気下で作製できる利点もある。
この混合粉末型光触媒シートは、シンプルな構造かつ補助電力等を使わず、水中で太陽光を照射するだけで水を分解することができる。また、同一面上で水素と酸素を生成することができるため、高性能を維持したまま大面積に拡張可能なことも特徴だ。
NEDOでは、「この混合粉末型光触媒シートを用いて、太陽エネルギーを利用した水からの水素製造において、1.1%の太陽エネルギー変換効率を達成した」としている。
さらに将来の実用化を見据え、簡便なスクリーン印刷による塗布型化プロセスも構築。同プロセスを用いた光触媒シートで、「水素および酸素の定常的な発生を確認した」とする。
NEDOは「スクリーン印刷を用いる作成方法は大幅な製造コストの削減が期待でき、圧倒的に安価な水素製造のための水分解光触媒モジュールへの転換点となる可能性のある研究成果だ。今後、実用化に向けた水素製造デバイスおよびモジュール構造の最適化を進め、2021年度末までに太陽エネルギー変換効率10%の達成を目指す」としている。
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