SiCパワーデバイスが初めて、量産車に採用されたことが分かった。
ホンダは2016年3月10日に発売した新型燃料電池車(FCV)にSiC(炭化ケイ素)を用いたパワーデバイスを搭載していることを明らかにした。量産車でのSiCパワーデバイスの搭載は「世界初」(ホンダ)としている。
SiCパワーデバイスを搭載したホンダの新型FCV「CLARITY FUEL CELL(クラリティ フューエルセル)」は、同日から自治体や企業を対象にリース販売を開始した他、2016年中に欧米での販売や、2017年夏ごろまでに個人向けの販売を計画する“量産車”だ*)。
*)関連記事:トヨタから1年遅れ、それでもホンダは燃料電池車を普通のセダンにしたかった[MONOist]
燃料電池スタックの出力電圧を最大500Vまで昇圧する「FC昇圧コンバーター」(FCVCU)の昇圧制御部にトランジスタ、ダイオードともにSiC素子を用いた“フルSiC”のIPM(インテリジェントパワーモジュール)を採用した。
ホンダによると、従来のFCVでは、燃料電池スタックとリチウムイオン電池から最大330Vで100kW出力のモーターを駆動していたが、開発したFCVCUにより、燃料電池のセル数を削減しながら130kW出力モーターを駆動できるようになったとする。
FCVCUには、4つのフルSiC-IPMを用いて、各IPMの制御位相を90°ずらし、リップル電流を低減する4相インターリーブ制御方式などを採用。その他、磁気結合型リアクトルの採用などにより、FCVCUを「従来より約40%小型化した」としている。
SiCパワーデバイスは、次世代パワーデバイスの一つで、既に一部鉄道車両やエアコンなどに採用が始まっている。本格的な普及時期を占う上で、より規模の大きい自動車市場での採用時期が焦点になっていた。
自動車業界でのSiCパワーデバイス採用の動きは、2015年2月からトヨタ自動車がパワーコントロールユニット(PCU)にSiCパワーデバイスを使用した試作ハイブリッド車で公道での走行試験を実施するなどしていたが、量産車での採用は今回が世界初の事例とみられる。
ホンダの研究開発子会社である本田技術研究所は2008年9月に、ロームと共同開発した車載向けフルSiC高出力(1200V/230A)パワーモジュールを発表していた。なお、ホンダは、今回採用したSiCデバイスの製造者については、詳細を明らかにしていない。
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