JR東海は新幹線車両向けに開発したSiC(炭化ケイ素)パワーデバイスを採用した駆動システムの実用化メドが立ち、今後、東海道新幹線への導入を検討すると発表した。
JR東海は2015年6月25日、新幹線車両向けに開発したSiC(炭化ケイ素)パワーデバイスを採用した駆動システムの実用化メドが立ち、今後、東海道新幹線への導入を検討すると発表した。
JR東海は、日立製作所、富士電機、三菱電機と共同で2012年から、SiCデバイスを活用した駆動システムの検討/開発を実施。このほど、コンバータ・インバータ(CI/主変換装置)にSiCハイブリッドモジュールを採用した駆動システムを開発した。
搭載したSiCハイブリッドモジュールは日立製作所が2012年に鉄道車両インバータ用に開発した3.3kV/1200Aモジュールで、コンバータとインバータの双方に適用した。モジュールには、シリコンベースのIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)ともにSiCベースのショットキーバリアダイオード(SiC-SBD)が使われている
このほど、JR東海などは開発した駆動システムを新幹線車両であるN700系に搭載し、営業線を用いて走行試験を実施。日立によると「高速鉄道用の主変換装置にSiCハイブリッドモジュールを適用した、営業線上での試験走行は世界初」としている。
走行試験を実施した結果、「主変換装置の小型軽量化や、主回路システム全体の省エネルギー化を実現しつつ、実用化レベルの性能が得られていることが確認された」という。主変換装置は、従来のシリコンベースの装置に比べ、重量が500kg軽量化されたとする。
SiCデバイス採用により、変圧器やモーターを含めた駆動システム全体としても1編成当たり約20%、軽量化したという。JR東海では、開発した駆動システムを導入した場合の効果として、軽量化/小型化による設計自由度の向上とともに「低損失な素子を使用するため、より省エネルギーな駆動が実現できる」としている。
鉄道車両でのSiCデバイスの活用は、SiC-SBDとSi-IGBTを組み合わせたハイブリッドモジュールが東京メトロ銀座線1000系車両などで搭載され営業運転が始まっている。スイッチング素子にもSiCトランジスタを用いたフルSiCモジュールについても、小田急電鉄1000形リニューアル車に搭載され営業運転が行われ、活用が始まりつつある。
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