ロームは、SiC(炭化ケイ素)を用いたMOSFETデバイスの価格が、2016年度には、Si(シリコン)ベースのIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)価格の1.5〜2倍程度に低減できるとの見通しを示した。現状、10倍程度とされるSiCデバイスとSiデバイスの価格差が見通し通り大幅に縮めば、SiCデバイスの普及に拍車が掛かることになる。
ロームは2013年8月29日、メディアなどを対象に開いた技術セミナーの中で、SiC(炭化ケイ素)を用いたMOSFETデバイスの価格が、2016年度には、Si(シリコン)ベースのIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)価格の1.5〜2倍程度に低減できるとの見通しを示した。現状、10倍程度とされるSiCデバイスとSiデバイスの価格差が見通し通り大幅に縮めば、SiCデバイスの普及に拍車が掛かることになる。
次世代パワーデバイス材料の1つとして有力視されるSiCは、従来のSiに比べ絶縁破壊強度が10倍、熱伝導率、禁制帯幅がそれぞれ3倍という優れた材料特性を持つ。SiCをパワーデバイスに用いることで、電力損失をSiに比べ10分の1以下に抑えられ、モーターやインバータを搭載する機器の省エネ化を実現するとされる。
近年では、SiCを用いたダイオードや、MOSFET構造のスイッチング素子が製品化され、実用化段階から普及段階へ徐々に移行しつつある。しかし、SiCデバイス価格は、Siデバイスに比べ極端に高く、本格普及には至っていない。
既にSiCによるダイオードとMOSFETを用いたフルSiCパワーモジュールなどの製品を量産化しているロームは、SiCデバイスの価格低減を目指し、相次いで新技術を導入し、「価格差縮小のペースを加速させる」(ローム)とする。
導入する新技術の1つは、SiCでは大口径となる6インチウエハーによるデバイス生産。ドイツのSiCウエハー製造子会社SiCrystalで、2013年9〜12月から6インチSiCウエハーの量産出荷開始を予定。「既に社内では、プロトタイプの6インチウエハーでのデバイス製造を行い評価を始めている」とし近く、現状の2〜4インチウエハーでの生産に加え、6インチウエハーによるデバイス製造を開始する見通し。「既に(ウエハーの品質を示す)マイクロパイプ密度(MPD)ゼロを達成している」(ローム)とする。
さらにロームでは、トレンチゲート構造を用いたSiC-MOSFETの量産を2014年春から開始する。これまで量産しているSiC-MOSFETは、プレーナ型のゲート構造だった。「トレンチゲート構造により、導通損失(オン抵抗)を50%以上低減できる見通し」という。トレンチゲート構造が実現できれば、単位面積当たりの性能を高めることができ、より小さなチップサイズでパワーデバイスが実現できるようになる。
6インチウエハー生産、トレンチゲート構造の導入により、SiC-MOSFETとSi-IGBTの価格差は、2014年度中に「3〜5倍になる」とし、その後量産効果を発揮させ2016年度には1.5〜2倍となるとの見通しを示した。
SiCとSiの価格差に関しては、さまざまな見方があるものの、「2倍を下回ると、価格差よりもSiC性能メリットが上回る用途が大幅に増える」との見解があり、本格普及に向けた1つの目安となっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.