パワー半導体の展示会「PCIM Europe 2016」で、耐圧650VのSiC SBD(ショットキーバリアダイオード)や同1200VのSiC MOSFETなどを紹介したToshiba Electronics Europe。SiCのSBDとMOSFETを組み合わせた“フルSiC”のパワーモジュールは登場しているが、コストの壁は大きいと同社は述べる。
Toshiba Electronics Europeは、ドイツ・ニュルンベルクで開催中の「PCIM Europe 2016」(2016年5月10〜12日)に合わせて、耐圧650VのSiC SBDの第2世代品や、スーパージャンクション構造を採用した耐圧600V/650VのMOSFETの第5世代品「DTMOS V」を発表した。新SiC SBDは、第1世代のSiC SBDに比べてダイの厚みが約3分の1になるとともに、電流密度が50%増加した。DTMOS Vは、前世代品に比べてオン抵抗とEMIノイズが低減されている。
ここ数年、東芝はSiC/GaNを含むパワー半導体事業の拡大に注力してきた。SiC SBDについては、電源用の耐圧600V/650V品をメインに開発している。SiC MOSFETでは、鉄道や産業機器でニーズが強い1200V以上の製品ポートフォリオを拡充している。ただし、GaNについては「1000V以下で開発を進めているが、市場の要求価格にまだ応えられないため、製品化には至っていない」(Toshiba Electronics Europeの説明員)という。
モジュールでは、SiC MOSFETとSiC SBDを使用した“フルSiCモジュール”も登場しているが、シリコンIGBT+SiC SBDの、いわゆるハイブリッドモジュールの需要は依然として高いという。理由は、フルSiCモジュールは、とにかく高コストだからだ。さらに寿命の問題もある。「現行シリコンインバータモジュールは10年程度経過したものは交換するのが一般的となっている。一方SiCの信頼性寿命はまだ不明確で、半分程度ともいわれている」(Toshiba Electronics Europe)。ただし、関心が高いのは確かだという。「特に欧州では、フルSiCモジュールへのニーズは高い。顧客からSiCについて尋ねられることは多いが、最終的にはハイブリッドモジュールを選択する」(同社)。そのため、「運用コストと寿命の点から、フルSiCモジュールは時期尚早なのではないか」とToshiba Electronics Europeは述べる。
SiCパワー半導体の価格を下げるには、1枚当たりのウエハーから製造できる個数を増やして量産の規模を拡大するのが素直な考え方だが、6インチよりも大きなウエハーでは、歩留まりが相当厳しいようだ。8インチのSiC基板を提供しているメーカーもあるが、Toshiba Electronics Europeは「8インチだと欠陥の数がぐっと増えてしまう」と述べている。現在は、4インチが主流で6インチに移行している段階だ。
〔取材協力:Mesago PCIM〕
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