西氏は、「ここくまの開発は、発売までのスピードとユーザーの意見を重視する“アジャイル型開発”を採用した」と語る。半導体商社は、初めに仕様を確定し、開発プロセスを実施するウオーターフォール型開発を採用するケースが一般的である。
多くのロボット機器が市場に出る中で、早めに市場にインパクトを与えること。自分たちで仕様を固めるのではなく、プロトタイプを実際に使ってもらいユーザーにフィードバックしてもらうのが重要と考えたことが背景になる。しかし、4社全体としてもウオーターフォール型開発を採用することが多く、難しい部分があったという。
「ハードウェアを扱う企業が多かったので、“仕様を決めないでどうやるの”という葛藤があった。しかし、各社がコミュニケーションロボットに大きな可能性を感じており、ユーザーの声を反映するために、かなり臨機応変に対応を行った」(鈴木氏)
つまり、異なる技術やノウハウを持った4社が、1)短いスケジュール、2)流動的な仕様、3)ユーザーの意見を反映させて開発することが求められたのだ。
バイテックが開発マネジメントで行ったのは、主に3つある。1つ目は課題発生時の問題切り分けと解決方法の提案である。西氏は、「プロジェクトの全体像をバラバラに切り分けて各企業が担当したが、技術的な面ですり合わなくなる部分がどうしてもある。その技術的な隔たりを埋める作業を行った」と語る。
2つ目は、更新される仕様の技術的な落とし込みだ。ユーザーからの声だけでなく、4社が集まって仕様を決めるブレスト会議を基に、細かい技術的な調整作業を各社に行った。
3つ目は、ユーザー調査である。NTTドコモとともに街頭インタビューを行い、想定されるユーザーの生の声を聞くことで、ユーザーの思いをここくまに反映できたとした。
例えば、スマートフォン用アプリはシニア層の声を反映させ、1〜2回の操作で全ての機能が完結できるようになっている。また、季節や時間によってデザインが変わるといったような、アプリ単体でも楽しめるインタフェースへと改善を行ったという。
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