今回は、雑音増幅によりスペクトル幅が拡大するという位相変調器型光周波数コムの課題を逆に利用し、高感度な「雑音検出器」として用いた。雑音を低減するための制御機構を実現することで、これまでよりも低雑音で周波数可変のマイクロ波/ミリ波を発生させることができることを実証した。
今回の研究ではまず、スペクトル幅800Hzの半導体レーザー光に対して、25GHz周期で駆動する6台の位相変調器を用いてレーザー出力光のスペクトル幅を拡大させた。そして光ファイバーを用い各波長の伝搬速度を制御することで短パルス化を行った。さらに、増幅に伴う非線形効果を利用して、スペクトル帯域幅の拡大を図り、200フェムト秒程度まで短パルス化する手法を開発した。その後、非線形ファイバーを用いて広帯域光を発生させた。
また、光周波数コムと基準レーザーとの干渉で増幅された雑音情報を電気信号に変換して、マイクロ波/ミリ波発生装置で発生する雑音を高い感度で検出した。位相変調器型光周波数コムのスペクトル幅は、マイクロ波/ミリ波発生装置の雑音を反映しており、中心波長から離れるにしたがって雑音が大きくなり、スペクトル幅も太くなる。今回の研究では雑音検出のために、中心波長から大きく離れた次数モードをフィードバック制御に用いることで、マイクロ波/ミリ波発生装置の雑音を、大幅に低減できることを実証した。
半導体レーザーの中心波長から278本離れたスペクトルを用いると、最も低雑音といわれる現行のマイクロ波・ミリ波発生装置(GPS同期)よりも大幅に雑音を低減できることが分かった。光周波数コムの光源を半導体レーザーから、線幅1Hzの狭線幅レーザーに変更すると、25GHz信号の中心周波数から1kHz離れた周波数における雑音を、−110dBc/Hzまで低減することができたという。このことは従来品より雑音を1/100に低減したことになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.