Q:「インダストリー4.0(Industrie4.0)」を何といって説明しますか?
江端 これについては、すでに、川野さんの解説記事がたくさんあります(その一例)から、詳細はそちらをご覧いただくとして、ここでは、川野さんの頭の中にある、本音の「インダストリー4.0」をうかがいたいです。
川野さん 「工場設備のApp Store」です。スタンドアローンでの使用が前提のロボットや機械はシステム構築が地獄で、メンテナンスで死屍累々(ししるいるい)です。PC用のプリンタみたいに、プラグインプレイで、ロボットや工作機械がつながって動くようになれば、どれほど「モノづくり」の生産性が上がるでしょうか?
江端 確かに、その通りですね。
川野さん 下町工場にはものすごいノウハウが山ほどあるんですよ。でも継承者がいない。ノウハウが活用される未来が見えないのです。
江端 「ガイアの夜明け」(テレビ東京系)とかテレビ番組で、よく取り上げられていますね。
川野さん ならば、そのノウハウが、人間を飛び越えて、直接、工作機械に乗り移ればいいんですよ。つまり、ノウハウのデジタル化です。それで暗黙知の伝承に弾みがつけばいいですし、継承者のいない工場なら、そのノウハウをアプリにして外販するビジネスを始めればいいんです。
江端 そんなに、うまくいきますか。
川野さん NC加工では、実際にプログラムが使われています。プログラムを最適化するノウハウのアルゴリズム化ができれば、これをセキュアにブラックボックス化して流通させられるApp Storeという新しい市場が生まれます。ノウハウのアルゴリズム化は簡単ではありませんが、市場が成立することはiPhoneで実証されているモデルです。
江端 なるほど、ノウハウの「チャリンチャリンモデル」ですね。
川野さん 加工用のスクリプトは、同じようなものをみんなでそれぞれ作り込んでいるんですが、労力がダブってしまうのはもったいないと思います。正当な対価を支払ってお互いの成果物を共有できるシェアウェアを流通できるインフラができたら生産性がグッと上がるはずです。
江端 しかし、そうなると技術の差別化が難しくなるのではありませんか。
川野さん ですから、自社の独自技術の部分だけを製品の秘匿にしとけばいいんです。メーカーや製品の共通部の機能をライブラリーとして搭載した機器、これが「インダストリー4.0対応マシン」です。
江端 なるほど、「工場設備のApp Store」という例え、よく分かりました。実は、私の考える「インダストリー4.0」は、そこから先のことなんです。
川野さん と、いいますと?
江端 私、下町の町工場の社長の息子だったので、よく知っているんですけど、工場の中で1番、厄介なモノって、なんだか知っていますか?
全員、よく分からないといった風な顔をされている中、私は続けました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.