2014年にノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏は2016年6月9日、工学院大学の学生向けに講演を行った。中村氏は「大学生は海外に5年間住んで、日本を外から見てほしい」と語る。
大学生は海外に5年間住んで、日本を外から見てほしい――
三族窒化物材料を用いた青と緑色の高輝度発光ダイオードを初めて開発し、2014年にノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏(カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)は2016年6月9日、工学院大学の学生向けに講演を行った。
まず、中村氏は「大学生は海外に留学するべき」とする理由について、日本の経済成長に対する不安を挙げる。サラリーマンの給料は減り続け、大手電機メーカーを筆頭に大企業も苦しい。このままでは「日本の経済は崩壊する」と中村氏は指摘する。
「日本は非常に真面目な国民で、納期などを必ず守る。モノづくりをさせたら世界一の装置を作ってくれる。しかし、良い発明や発見をしても、それを国内にしか売らない。半導体や家電製品、携帯端末、太陽電池は日本が最初に良いものを作ったのに、国内だけにしか売らなかった。だから、各国とのコスト競争に負けたのだ」(中村氏)
なぜ国内だけに売るのか。それは、日本人が英語をしゃべれないからという。世界標準となっている英語がしゃべることができないのは、絶対的なハンディとしている。
中村氏は「言葉は若いうちにしか覚えることができない。大学生くらいだったら5年くらいで身につけることができるだろう。海外に行く機会があったら、ぜひ積極的に手を挙げて英語を学んでほしい。その後、日本で働くのか、海外で働くのかはその人自身が決めればいい。大事なのは、それが日本のグローバリゼーションを助けるのにつながることだ。また、海外を経験したら日本の“良いところ”と”悪いところ”が見えてくる。それが非常に良い。皆さん自身の見える世界が変わってくる」と語る。
中村氏は、日本の教育制度の問題点についても言及する。日本をはじめとしたアジア各国では、有名大学に入学することが目的となっており、入学するにはクイズのように“決まった正解”だけが求められる。「社会で生きるすべを教えるのが教育だ」(中村氏)と指摘した。
「米国の教育の目標は、“社会で生きるすべ”となっている。まず、小学校の低学年から、毎週プレゼンテーションの授業がある。私がプレゼンテーションをまともにやったのは、徳島大学の卒業論文発表のときだ(笑)。
また、株の取引や金融、為替、アントレプレナーシップについても、小学校の頃からゲーム感覚で教育している。コンピュータの教育も盛んだ。だから、米国の大学生は知識として獲得しているので、ベンチャーを始めることが多い。ビルゲイツやスティーブ・ジョブズなんかも大学を中退して起業した。日本人の大学生は一切教えてもらっていないから、ベンチャーの『ベ』の字も知らない。そういう意味で、日本は1番大事な“時代に合った社会で生きていくための教育”を一切やっていない」(中村氏)
中村氏は最後に、「皆さんはこれから“社会で生きていくための教育”を受けていないと思って、大学にいる間に勉強を進めてほしい。あと、何度も言うように英語は大事。4〜5年海外に挑戦しなければ、日本の経済が崩壊してしまう」と語った。
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