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ルネサス成長へ材料はあるが「意欲足りない」ルネサス 社長兼CEO 呉文精氏(2/4 ページ)

» 2016年07月08日 12時10分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

1位2位戦略「最初の4〜5年だけ」

――世界ナンバーワン、ナンバー2へのこだわりはどの程度なのか。

呉CEO セグメントの切りようにもよる。車載半導体と言えば大きすぎる。車載マイコンに絞っても大きく駆動系、シャシー系、情報系と3つ使い方があり、そこまで分けていくかということも考えている。

2016年6月28日の就任会見で呉氏が紹介した資料 (クリックで拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス

 ただ、ナンバーワン、ナンバー2以外の事業は切り捨てるとなれば、どんどん、どんどん、セグメントが小さくなっていくもの。GEのジャック・ウェルチも、ナンバーワン、ナンバー2以外の事業は切り捨てるという戦略をとり、建物を残し人のみを消し去る中性子爆弾になぞらえ“ニュートロン・ジャック”という言葉も残っているが、彼がナンバー1、ナンバー2を採ったのも、最初の4〜5年だけだった。

 その後、彼は「目標を達成することよりも、高いアグレッシブな目標を立てたことを評価する」という方針に変えた。ルネサスも将来的にはそういうことも考えていかないといけない。

 ただ今は、セグメントで絶対にナンバーワンになるぞという気合、目線の上げ方が不足している。今日、ナンバーワンにはなれなくてもよいし、絶対にナンバーワンになれるわけでもない。でも、なるつもりでやる。そのために、社内で「“こういうパスをつなげば、優勝できるかもしれません”というところまでやってください」と言っている。しばらくやっていっていけば、だんだん、セグメントが小さくなっていって、「市場シェア7割あります」と社員が言い出したら、(ナンバーワン、ナンバー2戦略を)変えていく。

 ルネサスには成長する余地は十分ある。(事業母体の)3社合わせて、2兆円以上あった売り上げが、今は、削って7000億円を切るところまで来ているわけで。

 私は、「どんなマーケットシェアで、どうやったら勝てますか?」と質問している。

 社内で文句を言ったことがある。最近、「わが社が世界ナンバーワンの製品ができた」と報告があった。それも、これから立ち上がる市場に向けた製品だという。そこで、目標の世界シェアを聞いたら「2020年に、世界シェア40%」というのだ。どうして、わが社が世界ナンバーワンの技術を持っている上、市場はこれからゼロの状態から立ち上がるというのに、シェア目標がたった40%とは……。せめて70%ぐらいは目標にしたいと思う。ちなみに、「なぜ、40%しかできないのか」と質問すると「いやあこれぐらいかと……」という返事が来た。こういう考え方を変えていかなければならない。

提携、M&A候補と既に数回接触

――4000億円程度のキャッシュがある状況だが、それらの投資先はどこか?

呉CEO 成長のために、開発費は増やす。

 設備投資も、これまで徹底的に抑えてきたので、どこの分野でわれわれの競争力を発揮するかを決めてから、少しやろうと思う。

 あとは、提携、M&Aに使うことも当然、視野に入れている。われわれは、市場で売り出されている企業、事業を買う検討をしておらず、いろいろな見方から提携、M&Aの候補ではないかというところと、時々、「どうですか?」「How are you?」とコンタクトを取るなどしている。既に、私自身も数回、コンタクトを行っている。

半導体メーカーか、ソフトウェアベンダー

――提携、M&Aの候補はどのような企業なのか?

呉CEO われわれと組んで競争力がでるところ。技術、製品面でも、市場、顧客という面でも。基本的には半導体メーカーであり、ソフトウェアメーカーもあるかと思っている。主体的に、提携、M&Aを行うとルネサス経営陣は思っている。

――M&Aで売り上げ規模の拡大を実現する狙いは?

呉CEO ある程度、売り上げ規模は必要だと思っている。開発費は売り上げの何%と決まったわけではなく、ある分野で戦うには、一声、何百億円いるなど、絶対額が必要になるため、ある程度の規模は必要になる。

 ただ、国内半導体業界でも、電機メーカーから切り出して一緒にして、売り上げ規模を大きくだけでうまくいったかというとそうではない。ちゃんとした戦略を持って、やっていかないと。買収する時に大事なのは、こちらがどういう強みとか、戦略をハッキリ、明示すること。何となく似たような会社と、何となく一緒になるということは絶対にうまくいかない。

――開発費の投資先は、大部分はADAS(先進運転支援システム)など車載向けか?

呉CEO そのように、使途は限定はしていない。よく、「車載のルネサス」といわれるが、売り上げも利益も車載以外の方が大きい。大きなことを、ドカンとやろうと思っているわけではなく、ニッチマーケットでも、勝てるならば、大いにやろうと思っているわけで。別に、車載に限ったわけではない。

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