現状、パワー、RF向けSiCウエハー市場において、Creeの事業は大きな世界シェアを握る。Infineonによるとその市場シェアは、33%程度という。そして、SiCウエハーの供給先は、Wolfspeedのみならず、さまざまなパワーデバイスメーカーが含まれる。
Infineonでは「買収後も、当社以外のパワーデバイスメーカーにウエハーを供給するビジネスを継続し、拡大させていく。CreeもわれわれInfineonであれば、さらにウエハー販売の顧客数を増やせると判断し、われわれへの売却を決めている」(同社Corporate Vice Presidentを務めるKlaus Walther氏)という。
パワーデバイス分野での競合メーカーがウエハービジネスの顧客となるため、ウエハービジネスの顧客離れが懸念されるが「これまでも、パワーモジュール製品で当社と競合になるメーカーに対し、パワー半導体素子を供給してきた。(ウエハーの外販も)こうした枠組みと同じであり、成功すると確信している」(Walther氏)と言い切った。
同時に「これまで供給を受けてきたCree以外のSiCウエハーメーカーからも調達は継続する」とし、供給、調達両面で複数の選択肢を持った事業運営を行う方針を示した。
またSiCウエハー製造事業に対する投資についても「現状、割高なSiCウエハーコストを引き下げるべく、Cree以上に投資を行う」(日本法人社長森康明氏)とする。Creeは、現在、6インチサイズのSiCウエハーを主力に製造を行っているが、既に8インチサイズのSiCウエハーのサンプル出荷を手掛けており、Infineonは買収後、8インチウエハーの増産に向けた投資を実施していくことになる。
Infineonは、Wolfspeed買収によりパワーデバイス事業とともに、RFデバイス事業の強化も図れるとする。
Infineonは現在、シリコンウエハーやシリコンウエハー上にGaNを形成した「GaN on Si ウエハー」を用いて、パワーアンプなどのRFパワーデバイスを展開。シリコン製RFパワーデバイスでは世界第3位のシェアを有するという。一方で買収するWolfspeedは、SiCウエハー上にGaNを形成した「GaN on SiC ウエハー」によるRFデバイスを展開している。
Friedrichs氏は「5G(第5世代移動通信)など次世代無線通信が普及する2025年には、(現在主流の)シリコンデバイスよりも高速、高出力を実現しやすいGaN on SiやGaN on SiCによるRFパワーデバイスが主流になる見込みだ。シリコンから、GaN on SiやGaN on SiCへの置き換えに合わせてシェアを伸ばし、将来的にRFパワーデバイス市場で世界トップシェアを狙う。今回の買収で、それが可能になった」と語った。
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