ロームは2015年4月23日、トレンチ構造を用いたSiC(炭化ケイ素)によるMOSFET(以下、SiC-MOSFET)を開発し、2015年6月から量産すると発表した。
ロームは2015年4月23日、トレンチ構造を用いたSiC(炭化ケイ素)によるMOSFET(以下、SiC-MOSFET)を開発し、2015年6月から量産すると発表した。サンプル出荷は同年5月から。ロームでは、トレンチ構造によるSiC-MOSFETの開発、量産は「世界初」とする。
トレンチ構造とは、チップ基板表面に溝(トレンチ)を形成し、その側壁にMOSFETのゲートを形成した構造のこと。これまでのSiC-MOSFETが用いた基板表面に平たんなトランジスタを形成するプレーナ構造には存在する接合型電界効果トランジスタ(JFET)抵抗がなく、オン抵抗を削減できる利点があり、シリコンによるMOSFETやIGBTで広く用いられている構造だ。
ただ、SiCにトレンチ構造を適用する場合、長期信頼性を確保するため、トレンチゲート底部に発生する電界を緩和する構造を確立する必要があった。
今回ロームは、一般的なトレンチ構造であるシングルトレンチ構造ではなく、ゲートだけでなくソース部分もトレンチ構造とするダブルトレンチ構造を採用し、トレンチゲート底部の電界集中を緩和させることに成功。これにより、トレンチ構造のSiC-MOSFETの量産が可能になったという。
量産するSiC-MOSFETのオン抵抗は、既に量産中のプレーナ型SiC-MOSFETに比べ約50%低減した他、スイッチング性能も入力容量を同比約35%低減して向上させている。
トレンチ構造SiC-MOSFETは、SiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)と組み合わせたフルSiCモジュールとして製品化。モジュールは2in1構成で、定格1200V/180A。スイッチング損失は、同等の電流定格のシリコンIGBTモジュールと比べ約77%、プレーナ型SiC-MOSFETと比べでも約42%低減したという。
またロームでは順次、ディスクリートタイプの製品化も予定。定格650Vで最大定格電流118Aまで、定格1200Vで最大定格電流95Aまでを製品化する方針だ。
トレンチ構造採用SiC-MOSFETの生産は前工程はローム・アポロ(福岡県)、後工程は本社工場(京都市)で実施する。
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