情報通信研究機構(NICT)電磁波研究所の電磁波応用総合研究室は、透明な光学スクリーンにホログラム映像が浮かび上がるプロジェクション型ホログラフィック3D映像技術を開発した。実用的な画面サイズと視野角の両立を可能にした。
情報通信研究機構(NICT)電磁波研究所の電磁波応用総合研究室は2016年10月、透明な光学スクリーンにホログラム映像が浮かび上がるプロジェクション型ホログラフィック3D映像技術を開発したと発表した。従来の技術では難しかった、実用的な画面サイズと視野角の両立が可能だという。
同研究室は2014年より、HOPTECH(Holographic Printing Technology)研究プロジェクトをスタート。その研究成果の1つとして、コンピュータで設計した光の波面を、ホログラムとして記録できるホログラムプリンターを開発した。このホログラムプリンターを用いると、3Dデータの可視化や、任意の反射分布特性を持つ光学素子「DDHOE(Digitally designed holographic optical element)」を作製することができるという。
今回開発したプロジェクション型ホログラフィック3D映像技術は、ホログラムプリンターを使って作製した薄型の特殊な光学スクリーンと、ホログラム映像を投影するホログラフィックプロジェクターで構成している。新たに開発したホログラフィックプロジェクターは、NICTが2010年に開発したホログラフィック3Dディスプレイと、投影レンズを組み合わせることでホログラム映像を自由に拡大投影できるように工夫した。
映像を投影する光学スクリーンは、投影されたホログラム映像の光を、特定の観測位置に集光するよう設計されている。このため、ユーザーは自在に拡大されたホログラム映像を自由な視野角で見ることができるという。しかも、光学スクリーンはほぼ透明で、再生に用いる緑色(波長532nm付近)以外の光を透過する。このため、3D情報を表示する車載ヘッドアップディスプレイやホログラム映像を表示するスマートグラス、デジタルサイネージのホログラム映像化などへの応用が可能とみている。今回試作した光学スクリーンは画面サイズが7.3×4.1cmで、水平視野角は約20°となっているが、これらの仕様は自由に設計することができるという。
従来のホログラフィック3Dディスプレイは、空間光変調器(SLM)に表示する干渉縞によって入力光を自在に回折させ、3D映像を再生していた。しかし、この方式だとSLMの解像度が不足し、実用的なディスプレイの画面サイズと視野角を両立することが難しく、複雑な光学系が必要な場合も多いため、実用化が難しかったという。
同研究室では今後、ディスプレイのフルカラー化を進めていく。同時に、実用化に向けたシステムの簡素化、複数の観測者に映像を表示できるシステムの検討や観測位置を自由に走査できるシステムの開発などに取り組む予定である。
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