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QualcommのNXP買収、業界に及ぼす影響(前編)半導体史上最高額の買収劇(2/3 ページ)

» 2016年11月04日 11時30分 公開
[Junko YoshidaEE Times]

“真の大企業”の誕生

 今回の買収取引は、2017年末に完了する見込みだという。その時点で唯一確実なのは、新生Qualcommが車載半導体市場において、正真正銘の大企業になるということだ。

 2015年における両社の自動車関連の売上高を合計すると、新生Qualcommは、37億米ドル規模の車載半導体チップメーカーになる。米市場調査会社のIHS Markitで車載半導体担当アナリストを務めるAhad Ahmed Buksh氏は、「新生Qualcommは、同市場において2位を獲得しているInfineon Technologies(インフィニオン・テクノロジーズ)を10億米ドル上回る規模となる見込みだ」と指摘している。

2015年における車載半導体サプライヤーランキング 出典:IHS Markit

 Qualcommは、IHSが2014年に発表した世界車載半導体市場ランキングでは41位だったが、2015年にはCSRを買収したことで20位にランクを上げた。そして今回、NXPの買収により、第1位の座を獲得する。

 自動車に搭載される電子機器の数が飛躍的に増加していることから、Qualcommは資金力にものを言わせて、全ての新しい自動車に携わるための力を獲得する勢いを見せている。

製品ラインの重複が少ない

 ほとんどのアナリストは、両社の製品ラインがすぐに廃止することはないだろうとみている。Tirias Researchの主席アナリストを務めるKevin Krewell氏は、「全体的に見ると、製品ラインのほとんどが補完的な関係にあるようだ。幾つかの製品を調整することはあっても、製品ラインを丸ごと廃止することは、まずないだろう」との見解を語った。「プロセッサコアにしてもNXPはARMの標準コアを使用し、Qualcommは同社独自のARMコア設計チームを持っている」(Krewell氏)

 米国の市場調査会社であるThe Linley Groupでシニアアナリストを務めるMike Demler氏は、「QualcommとNXPに重複や対立する分野は多くはない。これは、Qualcommにとって車載分野は新しい市場だという理由が大きい」と述べている。

2015年度におけるQualcommの売上高比率。車載が少ないことが分かる 出典:Qualcomm

 ただし、Krewell氏が指摘するように、マルチコアARMの設計は重複している。両社間で相違のある製品ロードマップ、特に車載市場の製品がどのように調整されるかはまだ分からない。

 両社の統合によって誕生する新会社が、慎重に歩みを進めながら、社内の緊張関係を早急に解く方法を見つける必要があるのは明らかだ。

 米国の市場調査会社であるStrategy Analyticsの自動車部門でバイスプレジデントを務めるChris Webber氏は、「車載分野は現在、Qualcommの売上高のうち約2%とわずかな割合だが、NXPにとっては売上高の41%を占める主要部門だ。車載分野の失速は、それが兆候であれ現実であれ、新会社に緊張をもたらすと考えられる」と指摘している。

2015年度におけるNXPの売上高比率。車載分野が大半を占めている 出典:NXP

 同氏はEE Timesに対して、「Qualcommは車載市場における経験や知識が広くない。NXPの専門知識をいかに統合するかが、こうした緊張状態に対処するカギになる。Qualcommは間違いなく、車載市場首位というNXPの価値を明確に認識し、同市場での目覚ましい成長を狙っている」と述べている。

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