図3は、Xiaomi Yi Car Cameraのプロセッサ部の様子である。パッケージには「YI」のロゴが入っており、チップ型名は「A12-60」だ。これだけ読むと、Xiaomiは、AmbarellaのA12を用い、パッケージだけカスタマイズして、製品に活用したと推測できる。また型名の「-60」は、1080@60fps(フレーム/秒)の「60」からネーミングしたのではないかと想像できる。
Xiaomiはチップの内作を行っているメーカーではない。スマートフォンでは主にQualcomm(クアルコム)の「Snapdragon」プラットフォームを活用し、ウェアラブル機器ではDialog SemiconductorのBluetooth対応マイコンを用いている。
中国メーカーは総じてXiaomiと同じモデルで成長を遂げている。QualcommやMediaTekのプラットフォームや、欧米の半導体メーカーのチップを用いている。あるいは中国のAllwinnerやRockchipのARMプロセッサにX-Powersの電源ICなどを組み合わせ、タブレットやシングルボードコンピュータ、STB(Set Top Box)やOTT(Over The Top)、スティックPCを販売する。
図4は、A12-60チップを開封した様子と、AmbarellaのA12チップを開封した結果を比較したものである。A12-60とA12が全くの別物であることが判明した。AmbarellaのA12には、チップ内部に同社のロゴマークが埋め込まれていて、チップの各所には、ファブ(製造工場)を判定する手掛かりになる情報が多々載っている。一方でA12-60には、型名もロゴも年号も搭載されていなかった。
当社は実際のチップを開封して分析を行っている。多い週には60個ものチップを開封し、顕微鏡でチップの各所を観察し、分析する。分析の内容は主に、サイズ(チップのサイズ、設計部品のサイズ、実装部分の面積など)、プロセス、使用しているIP(Intellectual Property)、インタフェース、さらにはコストを含めた、チップの特徴などだ。
A12-60には型名やメーカーを特定できる情報が載っておらず、現時点では、より詳しい判定はできていない。しかしチップ調査が終わることはない。
当社は今後も続々とドライブレコーダーやADAS機能付き機器、アクションカメラなどを分解し、チップ開封を行っていく。ひょんなことから、判定保留にしていたチップの素性が分かることがあるからだ。
一例を紹介しよう。中国に、TIOTECHという、ドライブレコーダーを販売する会社がある。同社のドライブレコーダーには、「TIOTECH A8」という型名がパッケージに刻印されたチップが搭載されていたが、当時はどこのチップが使われているのか、判定できなかった。
TIOTECHチップを開封したときには判断ができなかったが、のちに台湾NOVATEKのチップをいくつか開封し、そのチップを、判断保留としていたTIOTECHチップと並べてみたときに、同じものであることが判明した。TIOTECHは機器メーカーであり、半導体の開発を行っていない。NOVATEKのチップを活用し、パッケージにだけTIOTECHのマークを入れていることが明確になった。
今回報告したXiaomi Yi Car Cameraに搭載されているA12-60の中身の詳細は確認できなかった。現時点では次の3つの可能性を挙げておきたい。
3つ目が最も有力だと思われるが、今回は最終的な結論を出すまでに至っていない。ただ、中国でもADAS機能付きドライブレコーダーが続々と販売されており、今後も当社はこれらの製品群を調査していくので、A12-60の素性は必ず明確にしたいと思っている。
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