この電池レスBLEセンサーを使ったクラウドセンシングソリューションのもう1つの特長がゲートウェイだ。ゲートウェイは、“10円玉センサー端末”からのデータをBLEで受信し、それを無線LANで、クラウドサービスにつながるWi-Fiルーターへ転送する役割を果たす。
ET 2016で紹介するゲートウェイ自体はCypress製品ではなく、大手半導体商社のAvnet製のレファレンスボード「BCM4343W」だ。だが、同ボードのキーデバイスであるBLEとWi-Fiに関する無線通信ICは、このほどBroadcomから買収したIoT向け無線通信事業が手掛けるICが搭載されている。このICは、「WICED」(ウィキッド)と呼ぶプラットフォームの一部。Wireless Internet Connectivity for Embedded Devicesの略であるWICEDは、その名の通り、組み込みデバイスをインターネットに無線接続するために必要な要素を統合したプラットフォーム。無線通信ICの他、開発プラットフォーム「WICED Studio」や開発者コミュニティーなどが用意され、組み込みデバイスをBluetoothやWi-Fi経由で簡単にインターネット環境につなげるための要素がそろう。
WICEDの中核を成すWICED StudioのSDKには、テスト済みのWi-FiおよびBluetoothプロトコルスタックが用意され、無線技術の知識がなくても無線機能を機器に組み込むことが可能。さらに、プライベートクラウドパートナーから提供されるサービスと、SDKに含まれる豊富なライブラリと使用することで、数分でクラウドサービスに接続できる特長も持つ。2016年11月にリリースされた最新版の「WICED Studio 4 SDK」では、Amazon Web ServicesやIBM Bluemix、Alibaba Cloud、Microsoft Azureなどのクラウドサービスをサポート。今後、AppleのHomeKitホームオートメーションプラットフォームや中国の微博(Weibo)ソーシャルメディアプラットフォームの他、「国内企業が提供しているクラウドサービスにも対応を進めていく」(日本法人戦略マーケティング部長 岩田宏之氏)という。
「WICEDは、単に組み込みデバイスに無線機能を組み込むだけでなく、簡単にさまざまなクラウドサービスとつなぐことができる点が、他の開発環境などと大きく異なる点」(岩田氏)と強調する。
ET 2016では、“10円玉センサー端末”のデータをゲートウェイを介して、IBMのクラウドサービスに蓄積し、温湿度情報がリアルタイムに更新されていく様子をデモで紹介する方針。
「IoT向け無線通信事業を買収して間もないが、従来のCypressのソリューションと、旧Broadcomのソリューションを連携、融合させることができた。今後も、WICEDの特長を生かしたIoT向けのソリューションを構築し、提案を進めていく」(岩田氏)
電池レスBLEセンサーを使ったクラウドセンシングソリューション以外にも、PSoCの新たな応用例を提案するワイヤレス液量センサーソリューションも注目だ。
さまざまなペリフェラルを持つPSoCだが、中でも代表的なペリフェラルが静電容量式タッチボタン制御が行える「CapSense」だ。高感度でノイズに強く、水ぬれ検出機能など付加機能の付いた静電容量式タッチボタンを手軽に実現できるとして、白物家電などで広く活用されているペリフェラルだ。
日本サイプレスではこのCapSenseを、これまでの指を検知する静電容量式ボタン制御以外にも、非接触で液体の量を検知できる静電容量式液量センサーとしての応用を提案中で、ET 2016では、CapSense機能とともにBLE無線機能を集積する「PSoC 4 BLE」を使ったワイヤレス液量センサーシステムのデモを実施。容器に入った水の量を静電容量式センサーで非接触で検知し、その検知結果をスマートフォンでリアルタイムに確認できる様子を紹介する。
「センサーが直接触れずに液体の量を検出し、スマートフォンやタブレット端末で確認したいというニーズは、想定以上に多い。インクやガソリンの残量検出をはじめ、医療分野でもCapSenseによる液量センサーが活用できるとして引き合いがある」(岩田氏)という。
この他にも、PSoCに加え、新たにFMファミリーの開発にも使用できるようになった統合開発環境(IDE)「PSoC Creator」の最新バージョンの展示や、USB Type-Cコントローラーの最新ソリューション、組み込みシステム向けメモリソリューションなどの展示もデモを交えて行われる予定だ。
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