では、2つ目の話題に移ります。
今回、2016年10月26日の午前7時35分ごろ、小田急小田原線狛江駅で発生した人身事故について、事故の巻き添えを食らった人のTwitterのメッセージを分析してみました。以前から、人身事故に巻き込まれた人たちの、「生々しい声」を分析したいと思っていたからです。
事の始まりは、わが家で一番早く家を出る、次女のこのメールでした。
2016年10月26日 8:14 江端<次女>
To: 江端家メーリングリスト
小田急線止まってるみたいなので気をつけてください
iPhoneから送信
江端家は、全員が小田急電鉄を利用していますので、このメールは、非常に重要なメッセージでしたが、それ以上に、朝のラッシュ時の鉄道の事故くらい、人の怨嗟のメッセージを蒐集(しゅうしゅう)するのに最も適したイベントはないことを、私はよく知っていたのです。
私は、自分のノートPCと通信カードをかばんの中に放り込み、小田急電車に乗って出社しました。ダイヤは乱れていましたが、下りの江ノ島方面の影響は比較的小さかったようで、私自身は、それほどの遅延なく会社に出社することができました。
電車の中でもTwitterAPIを使ったアプリケーションを立ち上げて、ツイートを蒐集し続け、PCのメモリバッファがパンクしたところで作業を打ち切りました。
こんな3000行のメッセージを一つ一つ解析していたら死にますので、今回も、「Excel」と、テキストマイニングツール(NTTデータ数理システムの「Text Mining Studio(TMS)」)に手伝ってもらいました。
その解析結果を示す前に、一応全てのメッセージに目を通した江端個人の感じた意外な事実をお知らせしようと思います。
【事実1】ネガティブメッセージが、驚くほど少ない
今回Twitterのメッセージを収集するアプリケーションでは、全件検索ができているようには見えなかったので、正確な数値ではありませんが、事故発生から約4時間後までのメッセージにおいて、「検索キーワード"小田急"+"人身事故"→1486件」に対し、「"小田急"+"飛び込み"→80件」「"小田急"+"死ね"→35件」「"小田急"+"死体"→10件」となっており、私の期待していた「怨嗟のメッセージ」は、驚く程に少なかったのです。
この連載ではしつこいほどに紹介しておりますが、読者の皆さんからいただいているアンケート結果のグラフ(最新)を再掲します(ちなみに、まだ、アンケートは実施中です。アンケートに回答してくださる方はこちらからどうぞ)。
このように、アンケート結果と、Twitterのネガティブメッセージの数に著しい不一致があることが分かります。Twitterは匿名性を盾にして、無責任なメッセージを発信すること"も"特徴とするメディアですから、怨嗟のメッセージを書き殴って、イライラを発散するのには優れたツールであるはずです。
もちろん、そのように使っている人もいまして、それなりにエゲつないし、下品なメッセージです(後で紹介します)が、それでも、私のザックリ所感では、ネガティブメッセージの発生率は、100人中3〜4人程度という感じで、正直拍子抜けしました。
【事実2】メッセージのほとんどがリツイート
「"小田急"+"人身事故"→1486件」に対してリツイートでないオリジナルメッセージは、約150件くらいでした(Excelでメッセージを昇順に並びかえて、目視で確認)。
つまり、『自分の意見を語るのも(スマートフォンに打ち込むのも)面倒くさいけど、自分の置かれている状況(駅や電車の中でスタックしている)は、他人に知らせておきたい』という感じなのかもしれません。そこからは「もう騒いでも無駄」という、諦めの気持ちが伝わってくるかのようです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.