ルネサス、車載レーダー分野に本格進出 : DSP内蔵の新型マイコン
ルネサス エレクトロニクスは、自動運転に必要となる車載レーダー向けに新シリーズマイコンを市場投入する。これを機に車載レーダー分野へも本格進出する計画だ。
ルネサス エレクトロニクスは2016年12月、車載レーダー向けマイコン「RH850/V1R-M」を発表した。新製品のサンプル出荷とDSPライブラリーの提供は2017年下半期より始める。
同社は、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転に対応する車載レーダーに向けたDSP内蔵マイコンとして、新たに「RH850/V1Rシリーズ」を展開することにした。その第1弾となるのが中距離レーダーセンサー向け製品のRH850/V1R-Mである。
車載レーダー向けマイコン「RH850/V1R-M」の外観
RH850/V1R-Mは、アクセラレーターとして動作周波数が320MHzのDSPコアを搭載した。これにより、CPUコアに負荷をかけることなく、FFT(高速フーリエ変換)やビームフォーミング、窓関数、チャネルキャリブレーション、ピーク検出などの演算処理を高速かつ低消費電力で実行することが可能となる。また、車載レーダーセンサー向けDSP用Mathライブラリも用意する。これを活用することでアルゴリズムの開発が容易となる。
CPUは、動作周波数が320MHzの「G3MH」コアを2個搭載した。それぞれ3.2DMIPS/MHzの処理能力を持ち、セーフティ関連処理やトラッキング処理などを高速に実行する。また、40nmプロセス技術を採用しており、フラッシュメモリおよびRAMともそれぞれ2Mバイトの容量を内蔵する。車載向けにジャンクション温度の耐性は最大150℃を実現している。この他、レーダー信号入力用シリアルインタフェース「MIPI-CSI2(3ユニット×4レーン)」やCAN-FDコントローラ、Ethernetコントローラなどの機能も搭載した。
パッケージは外形寸法が17×17mmの292端子BGAで供給する。製品の量産開始は2018年11月を予定している。
ルネサス呉CEO、2017年度は「売り上げ上昇する」
ルネサス エレクトロニクスの社長兼CEOの呉文精氏は2016年12月、EE Times Japanのインタビューに応じ、2017年度(2018年3月期)は売り上げ上昇を伴う成長を実現するとの意向を示した。Intersilの買収についても「順調に進んでいる」とした。
車載市場で“逆転”狙うルネサス
NXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)によるFreescale Semiconductor(フリースケール・セミコンダクター)の買収が完了したのは、約1年前だ。これによりNXPは車載半導体サプライヤーのランキングで首位に立ったが、NXPが統合作業を進める間、ルネサス エレクトロニクスも同市場でのシェアをさらに伸ばしていたようだ。
ルネサスが見据える2020年、車載/汎用事業の行方
ルネサス エレクトロニクスは2016年11月、2016年12月期第2四半期の業績とともに、2020年ごろに向けた車載事業と産業・ブロードベース事業に関する中期成長戦略を発表した。
Qualcomm+NXPは怖くない、車載ルネサスの自負
ルネサス エレクトロニクスは、ドイツ・ミュンヘンで開催中の「electronica 2016」(2016年11月8〜11日)に出展し、車載情報システム向けハイエンドSoCや、ADAS向け開発キットのデモを披露している。車載半導体メーカーのM&Aが続く中、ルネサスの強みは何なのか。
生き残りへ辛うじて挑戦権を得たルネサス
ルネサス エレクトロニクスは2016年9月13日、Intersilを約3274億円で買収すると発表した。製品面、事業面で補完関係にあるIntersilの買収で、ルネサスは半導体業界で続く再編の中で、生き残りを図ることになった。ただ、懸念材料もある。
千載一遇のチャンスだったルネサスのIntersil買収
ルネサス エレクトロニクスは2016年9月13日、米国の半導体メーカーであるIntersil(インターシル)を32億1900万米ドル(約3274億円)で買収すると発表した。同日、ルネサスは都内で記者会見を開き、社長兼CEOの呉文精氏らが登壇。買収の狙いや、見込めるシナジーについて説明した。
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