米国で開催された「ISS(Industry Strategy Symposium)」において、Googleは、半導体業界の経営幹部たちに対し、「あらゆる分野においてイノベーションを加速させてほしい」と懇願した。
Googleのデータセンター用ハードウェアの調達責任者であり、オペレーション担当シニアディレクターを務めるPrasad Sabada氏は、米国カリフォルニア州ハーフムーンベイで2017年1月8〜11日に開催された「ISS(Industry Strategy Symposium)」において、会場の経営幹部たちに向け、「ムーアの法則はもはや、新しいクラウドサービス市場の高まるニーズに対応することができない。このため、プロセッサやメモリ、インターコネクト、パッケージングなどの分野において、さまざまなイノベーションが求められている」と主張した。
Sabada氏は、「ムーアの法則が行き詰まる一方で、クラウドサービス市場が成長を遂げていることから、われわれは現在、転換期を迎えている。状況が再び変化しているため、業界全体として有意義な方法で対処していく必要がある」と述べる。
Sabada氏は、「特に、コンテキストスイッチなどのさまざまなオペレーションにおいて、レイテンシを低減するために最適化したプロセッサが必要だ。Googleの実際の作業負荷を左右する鍵となる。スペック(合成ベンチマーク)に対して最適化されたプロセッサは数多く存在するが、Googleの作業負荷は、スペックとは全く異なるためだ」と述べている。
またGoogleは、低レイテンシのメモリチップも必要としている。Sabada氏は、「プロセッサ性能としてメモリのレイテンシを高めることにより、投資に見合うだけの価値を得られる」と述べ、新しいメモリアーキテクチャへの取り組みに期待する姿勢を示した。
同社のライバルであるFacebookは、1年ほど前に、既存のNAND型フラッシュメモリよりも高い性能が期待できるとして、IntelとMicron Technologyが開発している不揮発性メモリ「3D XPoint」を支持することを表明した。Intelは2016年末に、3D XPointのサンプル出荷を限定的に開始している。
Sabada氏は、「インターコネクト市場の既存のプロセッサバスは、I/Oアクセスのオーバーヘッドが大きくなったりアクセラレーターデバイスが数多く搭載されていたりするので、次世代のメモリアーキテクチャには適していない。さらに、データセンターのサーバ接続には、シリコンフォトニクスなどの光インタフェースが必要だ」と述べる。
同氏は、Googleがサポートする取り組みの1つとして、IBMのインタフェース「OpenCAPI」を挙げている。ただ、同氏は、これとは別に2016年に、アクセラレーター向けおよびSCM(ストレージ・クラス・メモリ)向けのオープンインタフェース関連の取り組みとしてそれぞれ始動した「CCIX」と「GenZ」については、特に触れなかった。
Sabada氏は、「パッケージング市場では、ヘテロジニアスなチップを実現するための手法として、1つの基板上にロジック、メモリ、アナログなどを集積する2.5D(2.5次元)のチップ積層技術への移行が注目されていた。だがこの技術は、量産時に適切な歩留まりやコストを実現することができない」と続ける。
AMDのグラフィック部門担当チーフアーキテクトも最近、主流市場においてチップ積層技術を導入する上での同じような不満を語っている。
Sabada氏は、半導体業界の経営幹部たちに対し、「あらゆる分野においてイノベーションを加速させてほしい」としながらも、最先端チップの開発や製造において、複雑さとコストが増していることを認めた。
同氏は、「われわれは現在、電力の壁にぶつかっている。以前のようには周波数を高められない上に、シングルコアの性能が本質的に低迷している」と述べる。
Sabada氏は、将来の技術の1つとして、Googleが2016年に発表した「TPU(Tensor Processing Unit)」を挙げた。深層学習(ディープラーニング)専用のプロセッサである。同氏は、「機械学習は、クラウドコンピューティングの向上において鍵となる技術だ。当社のさまざまなクラウド製品で幅広く使える可能性を秘めている」と述べた。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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