次に、「結婚」ですが、これをGAでは「交差」と呼びます。染色体の一部を交換して別の染色体として生まれ変わります。
染色体の一部を交換したら、完全に別の染色体になってしまうようにも思えますが、この部分交換によって、その一部の形質が維持されつつ、別の染色体に変わることができるので、いわゆる「純血性」と「多様性」の両方を同時に実現することが可能となるのです。
そして、「純血性」の極に立つ処理が「突然変異」です。
これは、染色体の一部をわざと傷つけて、まったく別の染色体に替えてしまうものです。
GAの繰り返し処理を続けていると、ある特定の場所に染色体が集まってきて、新しい解を探しに行かなくなるという問題(ローカルミニマム)が発生します。それを回避するために、一定の確率で故意に染色体の一部を破壊することで、優れた染色体の発生を促します。
もっとも、突然変異によって、よりよい解が見つかるかどうかは、文字通り「運」です(大抵は失敗して即死する)。しかし、このように、強制的に変異体(ミュータント)を作ることで、どのような問題であっても簡単に適合する解探索が可能となるのです。
ここでは説明していませんでしたが、GAは時間とともにグニャグニャと変動する問題に対しても、威力を発揮します。それは、「エリート」染色体と、その「取り巻き」染色体が良い解の周辺を守りつつ、別の染色体が、常に別の空間を探し続けることで、「守り」と「攻め」の両方で解の探索を続けることができるからです。
染色体の評価(よしあし)は、評価関数で決めます。今回は単なる評価値の足し算としていますが、前述した通り、評価関数は、あなたが優先するもの(「ルックス」でも、「将来性」でも)を基準に、自由に作って構いません。
ちなみに、AさんまたはGさんが23日に、Dさんが24日に選ばれた染色体は、即、「致死染色体」(総計の値が0)となります。スケジュールが成立しなくなるからです。
それでは、最後にGAのアルゴリズムのフローをまとめてみます。
GAというのは、設計から計算に至るまで、抜群にコストパフォーマンスに優れた、江端お気に入りの人工知能技術の1つです。それに、独裁者を疑似体験できるという点においては、エンターテインメント性もあるという極めて珍しい人工知能技術であるといえます。
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