貼るウェアラブル実現へ、熱処理いらぬ封止技術:誰でも容易に低コストで(2/2 ページ)
同研究所は、SBSナノシートで電子素子を挟んだことで、はんだ付けなどの高温処理工程を用いずに、配線と電子素子を接続することに成功した。この時、ナノシート上の印刷配線と電子素子の電極部は、常に接触していたという。
またナノシートの膜厚を薄くするほど、電子素子の密閉性が向上し、より小さい接触抵抗値での接続を可能にした。これにより、印刷配線と素子の電気的接続は、ナノシート特有の柔軟性と密着性に由来することも明らかにしている。
SBSナノシートとLEDからなる厚さ約800nmのデバイスを皮膚に貼り付けたところ、生体組織表面でもLEDを安定的に点灯させることに成功したとする。
2枚のSBSナノシートで挟まれたLED。LEDを裏側から観察すると、SBSナノシートに印刷された配線が密に追従していたという (クリックで拡大) 出典:早稲田大学
銀配線の間にチップ抵抗器を配置し、SBSナノシートで封止した様子。左が2500nmのシート、右が厚さ250nmのナノシートを用いている。白点線の内側では、封止用のナノシートが基材側に密着せず浮いている。膜圧が薄く追従性の高いナノシートだと、密閉性が向上するという (クリックで拡大) 出典:早稲田大学
今回開発した手法は、耐熱性の低いプラスチック基材や電子素子に応用できるため、精密機器の封止にも有用である。電子回路の配線は、PCと家庭用のインクジェットプリンタで設計、印刷できるため、容易に低コストで“貼るエレクトロニクス”を作製可能だ。同研究所は、「学習用キットとしての利用も見込まれる」と語る。
今後はナノシート表面に回路やセンサー、アンテナを集積することで、貼るエレクトロニクスの開発を進め、健康医療やスポーツ科学分野へと応用を目指すとした。
- 「日本発」のプリンテッドエレで世界を狙うAgIC
インクジェット印刷による電子回路開発を行う東大発ベンチャーAgICは、面ヒーター「PRI-THERMO」(プリサーモ)の一般販売を開始した。2016年2月には、接着剤メーカーのセメダインからの資金調達を発表するなど活発な動きを見せる同社。しかし、2014年1月に会社を設立した当初の計画とは違う流れとなっている。同社社長の清水信哉氏にインタビューを行った。
- 4人の研究から始まった山形大発プリンテッドエレ
山形大学有機エレクトロニクス研究センター(ROEL)の時任静士教授と熊木大介准教授らは2016年5月、プリンテッドエレクトロニクスの研究開発成果を事業展開するベンチャー「フューチャーインク」を設立した。時任氏と熊木氏に、今までの研究内容や今後の事業展開について話を聞いた。
- 印刷技術で、有機強誘電体メモリの3V動作を確認
産業技術総合研究所の野田祐樹氏らは、低電圧でも動作する有機強誘電体メモリの印刷製造技術を開発した。この技術を用いて作成した薄膜素子は、電圧3Vでメモリ動作することを確認した。
- 触ると光る大判ポスターも! B0用紙への電子回路印刷サービスを開始
東京大学発のベンチャー企業で、米国と日本を拠点に事業を展開するAgICは、1030mm×1456mmのB0サイズの専用紙に回路を印刷できる技術を確立したと発表した。触ると光るポスター広告や、壁紙と一体化した照明などへの応用が期待される。
- 皮膚に貼れるバイオセンサー、ストレス検知や食品の鮮度判定も可能
山形大学は、「プリンタブルエレクトロニクス2015」で、有機トランジスタを用いたフィルム型バイオセンサーを展示した。特定の物質(成分)を検知できるようになっていて、皮膚に貼り付けてストレスマーカーとなる成分を検知したり、肉や魚などに貼り付けて鮮度を判定したりといった用途を想定している。
- プリンテッドLSIの幕開け!――印刷できるセンサー付きデジタルタグを作製
東京大学や大阪府立産業技術総合研究所などのグループは2015年1月26日、印刷で製造可能な有機温度センサーと有機半導体デジタル回路を開発したと発表した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.