触ると光る大判ポスターも! B0用紙への電子回路印刷サービスを開始:プリンテッドエレクトロニクス
東京大学発のベンチャー企業で、米国と日本を拠点に事業を展開するAgICは、1030mm×1456mmのB0サイズの専用紙に回路を印刷できる技術を確立したと発表した。触ると光るポスター広告や、壁紙と一体化した照明などへの応用が期待される。
電子回路作成ツールの開発・製造を行うAgICは2015年3月17日、電子回路の大判印刷技術の確立と、その事業化を発表した。同技術は、特殊な銀ナノ粒子インク(導電性インク)を用いて専用紙に電子回路を印刷することで、これまで通常のプリント基板では難しかった大判サイズの回路の作成を安価に行えるというもの。
併せて、印刷した回路を制御するコントローラユニットも発表した。電子回路を印刷した紙に同ユニットを接続することで、紙上の任意の箇所をタッチスイッチとして利用することができるという。コントローラユニットはBluetoothを内蔵していて、スマートフォンやPCからの操作にも対応できる。触ると光るポスター広告や、壁紙と一体化した照明など、平面をインタフェースとして活用するさまざまな分野に応用できるとしている。
印刷済み用紙の価格は1030mm×1456mmのB0サイズで5〜10万円程度、専用のコントロールユニットはリースによる提供を予定している。
左から、大判印刷回路、印刷回路の拡大図、専用コントロールユニット(クリックで拡大) 出典:AgIC
AgICは、東京大学発のベンチャー企業である。家庭用のプリンタやペンで描くことのできる導電性インクを製造、販売している。
AgICの導電性インクは、“プリンタ内では固まらず、紙に吹き付けられたらすぐ乾く”というプリンタ用インクに求められる特性を実現したものだ。同社は既に、導電性インク入りマーカーや、ブラザー製プリンタに対応するインクカートリッジ一式の一般販売を開始している。
同社は、導電性インクの用途として、教育現場での活用や、大面積の回路印刷などを狙っていた。今回の発表で、大面積回路への用途の道が開けたことになる(関連記事:市販プリンタで回路を印刷! 銀ナノ粒子を使った導電性インク)。
- 市販プリンタで回路を印刷! 銀ナノ粒子を使った導電性インク
東京大学発のベンチャー企業 AgICは、市販インクジェットプリンタで印刷できる導電性インクの市販を2014年夏から開始する。写真用光沢用紙や同光沢処理を施したプラスチックフィルムに自在にパターンを描くことができ、教育現場や電子工作市場、大面積基板を必要とする用途などへの拡販を展開する。
- インクにも柔軟性を、伸縮自在の銀ペースト
プリンテッドエレクトロニクスでは、回路を印刷するインクやペーストも重要になる。「プリンタブルエレクトロニクス2015」では、伸縮性がある銀ペーストや、20μmの線幅で回路を形成できる銀ナノ粒子インクなどが展示された。
- 室温印刷プロセスで有機TFTを実現、紙や皮膚にも形成が可能に
物質・材料研究機構(以下、NIMS)や岡山大学らの研究チームは、室温の大気中で印刷プロセスを用い、有機薄膜トランジスタ(TFT:Thin-Film Transistor)を形成することに成功したと発表した。フレキシブル基板上に有機TFTを形成したところ、従来の有機TFTに比べて高い移動度を達成した。今回の研究成果を用いると、大面積の紙や布、さらには人間の皮膚など生体材料の表面にも、半導体素子を形成できる可能性を示した。
- ITOを用いない透明電極の普及加速へ、まずは20〜30インチのタッチパネルに
ITOに代わる透明電極の材料である「ClearOhm」を開発するCambrios Technologies。まずは、低コスト化という優位性が最もよく現れる20〜30インチのディスプレイで、ITOからClearOhmへの置き換えを狙う。
- 亀裂を自己修復する金属配線、フレキシブル機器への応用に期待
早稲田大学が、クラック(亀裂)を自己修復する金属配線を実現したと発表した。金属配線を覆うように金属ナノ粒子を含む液体を配置し、電圧を印加して、ナノ粒子をクラック部分のみに引き寄せて修復するというもの。フレキシブル機器などに応用できると期待される。
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