自動運転車の開発は、自動車メーカーや半導体メーカー、ソフトウェアメーカーなどが連携して取り組むことが、もはや常識になっている。とりわけ際立っているのが新興企業の存在だ。彼らに共通するのは、自動運転に必要な、極めて高度な知識と技術を有しているということである。
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Ford Motor(Ford)が2017年2月10日(米国時間)、米国ペンシルベニア州ピッツバーグに拠点を置くArgo AIに10億米ドルを投資すると発表した。Argo AIはこの時まで、無名の技術新興企業の中の1社にすぎなかった。
Argo AIは、2人のロボット工学専門家(Google出身のBryan Salesky氏と、Uber出身のPeter Rander氏)が、2016年11月に設立したばかりの新しい企業だ。同社は、Fordが接触してくるまでの間、実に巧妙に人目を忍んでいたといえる。
ここで、ある考えが浮かんでくる。
どこかの企業に拾い上げてもらうのを待ちながら、次なる「Waymo(Googleの持ち株会社であるAlphabetが設立した、自動運転技術を開発する会社)」となることを目指している技術新興企業は、一体、何社ほど存在するのだろうか。
さらに重要なのが、それはどのような企業なのかという点だ。
FordがArgo AIへの投資を発表したことから、両社がいかに互いを必要とし合っていたかがよく分かる。しかし、最終的にこの協業関係を成功させるのは、決して容易なことではない。
Fordは今回、プレジデント兼CEOであるMark Fields氏が「ハイブリッドモデル」と呼ぶ、ビジネスモデルを開発した。FordはArgo AIの大株主になるが、Argo AIは高い独立性を維持するという。Argo AIは、自社株式を大量に保持することができるため、トップクラスの人材を確保しやすくなる。
General Motors(GM)は2016年に、自動運転車の開発を手掛ける新興企業Cruise Automationを、10億米ドルを超える金額で買収しているが、GMにとっては過剰な支払いなのではないかと懸念された。しかし実際のところ、GMは、長い期間をかけて10億米ドルを支払うという契約にまとめ上げた。GMが、技術開発チームを完全な状態のまま維持し、Cruise Automationの人材を流出しない考えであることがよく分かる。
IHS Automotiveのインフォテインメント&ADAS(先進運転支援システム)部門でリサーチディレクターを務めるEgil Juliussen氏は、「GMは、Cruise Automationを独立グループとして確保した。Cruise Automationの開発チームは、自社の技術を、GMの他のモデルの車にではなく、電気自動車だけに統合することに注力する。これは、実に正しい方法だといえる。GMがCruise Automationの開発チームを非常にうまく取り入れたことに、大いに感銘を受けた」と述べている。
一方、FordとArgo AIのビジネスモデルは、これとは少し異なる。Fordは、自動運転車開発チームの一部を、子会社となるArgo AIに統合する予定だからだ。
いずれの場合も、ここから得られる教訓は、「ただ単に、正しいパートナーを見つければよいのではない」ということだ。協業関係を成功に導くためには、単純に買収するだけでは不十分なのである。
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