九州大学の研究グループは、西安交通大学の研究グループと共同で、熱を利用したスピンデバイスの特性を、高い精度で評価できる方法を開発した。
九州大学大学院理学研究院量子ナノスピン物性研究センターの木村崇主幹教授と理学府の野村竜也氏らによる研究グループは2017年3月、西安交通大学の研究グループと共同で、熱を利用したスピンデバイスの特性を、高い精度で評価する方法を開発したと発表した。
研究グループは、「純スピン流」と呼ばれる電流を伴わないスピン流に着目し、さまざまな制御技術の開発に取り組んできた。純スピン流を活用すれば、よりエネルギー効率の高い動作が可能なスピンデバイスを実現することができるという。
研究グループは、開発済みの強磁性合金「CoFeAl」を用いて、他の強磁性金属の熱スピン流注入特性を高い精度で評価することができる手法を開発した。今回は、CoFeAlと熱スピン注入効率が小さい強磁性金属「NiFe」を近くに配置したスピンバルブ素子を作製。これを用いて、入力端子と出力端子を入れ替えた、2種類の端子配置で熱スピン注入特性を評価した。
作製したスピンバルブ素子を測定した。入力端子がCoFeAlの場合(端子配置A)は、0.17μVのスピン流による大きな電圧変化を観測することができた。ところが、NiFeを入力とした場合(端子配置B)には、熱流による電圧変化が支配的となり、スピン流による電圧変化は20nVと極めて小さくなることが分かった。同一素子でありながら、端子を入れ替えると、検出される純スピン流の強度に大きな差が生じることが判明、強い非相反性を有することを確認した。
この要因について研究グループは、「CoFeAlがNiFeに比べて、優れた熱スピン流注入特性を有している」ことに加え、「2つの端子配置における信号強度の比から、NiFeの熱スピン注入特性を容易に導き出すことができる」ことを新たに見出した。この手法だと素子特性のバラツキが排除され、信号強度も増大している。このため、従来に比べてより高い精度で、各物質の熱スピン注入特性を求めることができるという。
研究グループによれば、今回の研究成果を用いることで、あらゆる強磁性金属の熱スピン注入特性を評価することが可能となった。このため、省エネデバイスの物性研究に向けた新たなツールとして活用することができるとみている。
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