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TSMCの高性能・高密度パッケージング技術「CoWoS」(後編)福田昭のデバイス通信(107) TSMCが解説する最先端パッケージング技術(6)(2/2 ページ)

» 2017年04月28日 10時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]
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ウエハー処理プロセスで大量のパッケージを一括して組み立て

 CoWoS技術によるパッケージ製造(組み立て)の特徴は、直径が300mmあるいは200mmといったシリコンのウエハーを扱うことにある。大量のパッケージを一括して製造するので、組み立てのコストが下がる。

 シリコンインターポーザは極めて薄いので、そのままだと簡単に反ってしまう。そこで「キャリア(Carrier)」とよぶ、シリコンウエハーと同じサイズの支持体(円盤)に薄いシリコンウエハーを載せた状態で、パッケージの製造を始める。始めの工程は、シリコン貫通電極(TSV)の形成、高密度配線層の形成、マイクロバンプの搭載である。

 次の工程は、シリコンダイの搭載とバンプ接続である。シリコンダイ(チップ)をシリコンウエハー(実際はインターポーザ)に載せることから、「CoW(Chip on Wafer)」工程と呼ばれる。

 それから、キャリアの取り外し(デマウント)、シリコンインターポーザへの切り出し(ダイシング)と進む。切り出されたシリコンインターポーザ(シリコンダイ搭載済み)とパッケージ基板を接続し、シリコンダイを封止し、ハンダボールを取り付け、最終テスト(FT:Final Testing)へと至る。これでパッケージが完成する。

CoWoS技術によるパッケージ製造(組み立て)の工程。下は「CoCoS(Chip on Chip on Substrate)」と呼ばれる、先にキャリアを外してシリコンインターポーザに切り出してから、シリコンダイを載せる技術の工程。出典:TSMC(クリックで拡大)

シリコンインターポーザの反りを抑えるCoWoSの製造工程

 パッケージの信頼性を大きく左右するのが、シリコンインターポーザの反りである。完成形の構造は同じでも、製造工程は1通りとは限らない。大きく分けると2通りの製造工程が考えられる。

 2通りの製造工程の大きな違いは、キャリアを外すタイミングにある。1つは、シリコンダイを載せる前にシリコンウエハーからキャリアを外し、ウエハーをシリコンインターポーザに切り分けてしまう工程である。切り分けられたシリコンインターポーザに、シリコンダイを載せていく。このような製造工程を採用したパッケージング技術は「CoCoS(Chip on Chip on Substrate)」と呼ばれている。

 CoCoS技術の利点は、ウエハーに比べるとはるかに小さなシリコン基板(シリコンインターポーザ)に、シリコンダイを載せていくことにある。小さなシリコンダイ基板にシリコンダイを載せる装置のコストは、大掛かりなウエハー処理装置に比べると、はるかに低い。設備投資をあまりせずに、少量生産から始められる。TSMCはCoCoS技術を最初に開発し、シリコンインターポーザのパッケージを製造したようだ。

 しかしCoCoS技術には、シリコンインターポーザが反りやすいという弱点があった。温度が変化すると、反りの量が変わってしまう。このため、製造工程での温度変化によってシリコンインターポーザの端部でマイクロバンプ接続が壊れる恐れが少なくない。製造歩留まりが低下するリスクを伴う。

 一方、キャリアをギリギリまで外さないのが、CoWoS技術である。キャリアで固定されているので、シリコンインターポーザは反りにくく、マイクロバンプ接続はシリコンインターポーザの端部でも維持される。

 CoWoS技術の問題点は装置コスト(初期コスト)にある。ウエハーとキャリアを扱う工程が増えるので、装置コスト(初期コスト)が上昇する。一定の数量が見込めないと、CoWoS技術は採用しづらい。ただし、いったん設備を導入してしまうと、パッケージ1個当たりの製造コスト(ランニングコスト)はCoWoS技術の方がCoCoS技術よりも低くなる。一定の生産数量が確保できれば、初期コストを回収できる時期は早まる。

 TSMCは最終的にはCoCoS技術を諦め、CoWoS技術をシリコンインターポーザ技術のパッケージングに採用した。信頼性の維持と製造歩留まりの向上という観点からは、この決断は適切だったと言えよう。

CoWoS技術とCoCoS技術によるシリコンインターポーザの反り(warpage)の違い。CoWoS技術では温度変化に対する反り量が一定であるのに対し、CoCoS技術では反り量が大きく変化する。出典:TSMC(クリックで拡大)

次回に続く

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