メディア
特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

おうちにやってくる人工知能 〜 国家や大企業によるAI技術独占時代の終焉Over the AI ―― AIの向こう側に(11)(4/9 ページ)

» 2017年05月31日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

20世紀のスパコンを超えてしまった現代のパソコン

 昔のコンピュータ(パソコンを含む)を使ったAI技術の開発は ―― 今考えると、実に長閑(のどか)なものでした(遠い目)。

 ソースコードに printf() を埋め込んで、あるいは、GDB(Gun Debugger)で、1行ずつステップを追いかけて、バグを見つけていきましたし、デバッグの最中に実装したアルゴリズムの間違いに気が付くこともできたものです。

 第1次AIブームの主役は、スーパーコンピュータ(スパコン)であり、そして、スパコンは、白衣を着た何十人もの研究員によって、24時間体制で、管理運用され続ける、祭壇に祭り上げられる神様のような存在でした(江端の勝手なイメージですが)。

 しかし、今やパソコンは、20世紀のスーパーコンピュータ(スパコン)の性能を軽く追い越しています。パソコンは「個人で管理し、制御することができる」という意味において、「パーソナル」な「コンピュータ」だったわけですが、今や、私たち、プロのITエンジニアですら、パソコンの処理の中身を、追跡して理解するのが難しくなってきています。

 かつてパソコンのソフトウェアは自分で作るものでした(ソフトウェアがなかったから)。信じられないかもしれませんが、私が小学生の頃には、プログラミング教育なんかなくても、自分でゲームをプログラミングしていた子どもがいたのです(確か、「パソコン少年」と言われていました)。

 今や、パソコンは、その所有者が、自力で新しい価値(新しいソフトウェアなど)を作り出す装置としては、その役目を終った ―― かのようにも見えます。

 しかし、決してそんなことはないと思うのです。

 例えば、たった一人でパソコンを使って、キャラクターを創作し、楽曲を作り、そのキャラクターに歌を歌わせて、踊らせる若者がいる ―― これは、紛れもない、パソコンによるパーソナルな新しい価値の創出だと思うのです。

 ならば、私も、諦めるべきではないと思うのです。

 私は、第2次AIブームの挫折組の一人で、予算のないひもじさで、AI研究員から脱落したヘタレであり、そして、私は、私以外の多くの若手研究員が数年以内にこの第3次AIブームの挫折組として脱落していく残酷な未来も見えています(参考記事)。

 しかし、今の私は、「週末自宅研究員」という概念にたどりついています。

 加えて、今や、大学や会社ではなく、自宅に20年前のスパコンレベルのコンピュータが鎮座しているのです。これで、今回も諦めてしまったら、私は、本当に、言い訳のできない真のヘタレ研究員に成り下がってしまう、と思うのです。

おうちでできるAIは?

 とはいえ、私の能力でできることは知れている、という自覚はあります。例えば、私が「おうちでAI ―― Do It Yourself AI(DIY-AI)」のノリで、「ナンシー」を作り出せる可能性は、絶望的に低いと思います。しかし、それでも「週末自宅研究員」と「週末自宅ライター」を続けていくという覚悟だけはできております。

 私の言う「おうちでAI」の狙いは、自分(だけ)でAI技術を開発、適用して、自分のため(だけ)にAI技術を使うことにあります。

 そこで、今回、そのような「おうちでAI」という観点から、どのようなアプリケーションやサービスが考えられるか、ざっくり考えてみました。

 こうやって見てみると、自宅にこそ必要なAI技術というのは、家事、育児、介護に偏りがちになりますし、単なる情報処理だけでは足りずに、どうしても駆動機械が必要(例えば、宅内エレベータ、自動運転の車椅子など)となることも問題となります。

 となると、施工技術、配電技術、そしてIT技術なども必要となり、エンジニアでさえ難しい話になるとも思います。

 ですので、今回の「おうちでAI」については、「自宅への実装」についてはいったん忘れることとして、週末自宅研究員の「週末自宅データ分析」とか、「週末自宅シミュレーション」に特化して、話を進めることにします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.